恐怖を演出した「ゲーム用語」

こうして生まれたバックルームズ現象は、どこだか分からない中ぶらりんな空間に迷い込む感覚を呼び起こした。オンライン掲示板レディットの「リミナル・スペース」に特化したコミュニティーの投稿にも、そんな感覚は顕著に表れている。リミナル・スペースとは、現実と非現実の狭間にある不気味な空間だ。

もしかするとバックルームズは、「ふっと意識が飛んだ時の自分は、どこに行っているんだろう?」という疑問に対する1つの答えなのかもしれない。ネット上で言語化されるまで自覚していなかったにせよ、私たちの多くがそんな感覚を知っている。

10代のパーソンズをバックルームズの世界に引き付けたのも、この点だった。

「言葉で言い表せないだけでそういう感覚は確かにあると、大勢の人が感じていることに心を引かれた。もっと掘り下げられるテーマだと確信した」と、現在21歳の彼はUSAトゥデー紙で語っている。

バックルームズはデジタル空間の可能性を示す格好の例だ。起源は、やはりネット掲示板から生まれたホラー系キャラクター「スレンダーマン」を連想させる。

4chanに投稿された文章はスレンダーマンと同じく都市伝説として人気を博し、フォーラムやSNSへと爆発的に広まった。

映画『バックルームズ』©2026 BACKROOMS RIGHTS LLC, PC FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

特に人々の不安をかき立てたのが、文中の「ノークリップ」という言葉だ。これはゲーム用語で、プレーヤーが壁や床などの障害物を擦り抜けられる状態を意味する。転じてバックルームズの世界では現実から足を踏み外し、現実とも非現実ともつかない場所に落ちていくことを指す。

主に小説や短編動画の形で二次創作が続々と生まれ、バックルームズは1つのホラー・ジャンルへと成長した。

「スレンダーマン」は映画が失敗し、事件を引き起こした