Tora Agarwala Jatindra Dash Praveen Paramasivam
[ニューデリー/チェンナイ 27日 ロイター] - インド南部で旅行会社を営むサイード・サディクさんは、中国チベット自治区にあるヒンドゥー教の聖地への巡礼ツアーに約60人を送り出した。しかし26日にネパールと中国の国境地帯を襲った大規模な土石流と洪水により、ガイドを務めていた息子を含む30人余りの行方が分からなくなっている。
土石流のためにネパールとチベットでは約1500人が行方不明となった。行方不明者の中には700人を超える外国人が含まれており、外国人ではインド人が最も多く、オーストラリア人、米国人、英国人、カナダ人、マレーシア人、韓国人、日本人などもいる。
インド外務省によると、27日時点でネパールでは少なくとも288人のインド人が行方不明となっており、さらに約200人が中国側で足止めされている。ネパール当局は約100人のインド人旅行者と25人の中国人作業員の所在を確認したと発表した。
インド国内だけでなく世界各地の家族から、関係当局のホットラインや旅行会社、ソーシャルメディアに安否確認を求める問い合わせが殺到している。旅行会社の一つが、タミルナド州にあるサディクさんの「スーパー・ヤトラ・エージェンシー」だ。
サディクさんによれば、23日に出発した57人の巡礼団は、ネパール・中国国境で出入国手続きを終えて26日にチベットへ入る予定だった。「一行はネパール国内を3台のバスで移動していた。参加者の1人から連絡があり、約20人を乗せた1台は無事に通過できたが、別のバスが谷へ転落するのを目撃したと聞いている」という。
行方不明者の中には、息子のサイード・ウマル・ファルークさんも含まれている。
サディクさんは「水位は下がりつつあると聞いているものの、一帯は依然として泥に覆われている。何人が無事に戻れるのか、全く分からない」と述べた。
<ヒンドゥー教徒と仏教徒の聖地>
多くのインド人は、ネパールを経由してチベットにあるカイラス山を訪れる。標高の高いこの聖地はヒンドゥー教徒と仏教徒の双方から崇拝され、ヒンドゥー教では、シバ神と妻パールバティが永遠に住む場所と信じられている。
26日朝、巡礼ルート上にあるチベット側のギロン国境検問所に大量の濁流が押し寄せ、多くの人々が流された。検証済みの映像でもその様子が確認できる。
ネパール中北部のラスワ郡は今回最も大きな被害を受けた地域で、トレッキングの名所としても知られている。8月は最盛期ではないものの、現地当局は一定数の旅行者がいたとみている。
8月はカイラス・マナサロワール巡礼の最盛期にも当たる。天候やチベットへのアクセス条件が比較的良好なためだ。タミルナド州から参加していたバリナヤギさん(62)は、幸運にも被害を免れたバスに乗っていた。義理の兄であるA・マノハランさんによると、26日正午ごろ本人から無事を伝える電話があったという。
マノハランさんは「3台のバスが連なって移動していたところに土砂崩れが直撃した。前後にいたバスは2台とも流されたようだ。どういうわけか、彼女が乗ったバスが走っていた道路の区間は流されなかった」と述べた。
車内には泥が流れ込んだものの、乗客たちは車外へ脱出し、丘の斜面を登って避難。その後一行は軍の施設で保護され、さらにヘリコプターでネパールの首都カトマンズ近郊へ移送された。そこから陸路でカトマンズへ向かう予定だとマノハランさんは説明した。
<失われる希望>
インド外務省は、被災した自国民の支援に向けてネパール当局と連携していると発表した。カトマンズのインド大使館のほか、タミルナド州、ケララ州、アンドラプラデシュ州などの当局も家族向けのホットラインを開設している。
行方不明者の中には、現在オーストラリア在住で、インド東部オディシャ州出身のサンディープ・モハパトラさん夫妻も含まれている。いとこのソウミャ・モハパトラさんは「最後に話したのは23日で、翌日にメッセージを受け取ったのが最後だった。それ以降、2人の消息はまったく分かっていない。被害の規模や死者数を聞き、希望を失った」と語った。
<巡礼団全体が消息不明に>
インドの宗教指導者サドグルことジャギ・バスデーブ氏は、自身が率いるイシャ財団のスタッフ3人と、さまざまな国籍の巡礼者77人が行方不明になっていると明らかにした。財団の巡礼プログラム「イシャ・セイクリッド・ウォークス」のコーディネーター、マー・ガンビーリ氏はインドの通信社ANIに、一行は巡礼を終えて中国側で出入国手続きを進めている最中に連絡が途絶えたと述べた上で「(26日の)午前9時5分に団長と話した。しかし10分後に再び連絡を試みたところ、団長にも他の誰にもつながらなかった。事故はそのわずかな時間の間に起きたようだ」と述べた。
ネパールの旅行会社にも、世界中の家族から安否確認の問い合わせが相次いでいる。カトマンズに拠点を置く旅行会社「リーフ・ホリデーズ・トレックス・アンド・エクスペディションズ」は、顧客46人とスタッフ9人が行方不明になっていると明らかにした。
自身の兄も行方不明者の1人という同社代表のゴパル・タパさんは「状況を確認するためヘリコプターで国境地帯まで向かったが、何も見つけられなかった。現地は完全に破壊されていて、地域そのものが消え去ったような状態だ」と述べた。さらに「非常に多くの家族から連絡を受けているが、伝えられる情報はない。希望はほとんど残されていない」と語った。