恐怖をあおるには十分な数字だろう。ロシアが秋の下院選後に、新兵50万人を動員し、果てしない戦争に送り込もうと計画していると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が世界に向かって警鐘を鳴らした。
ゼレンスキーが英スカイニュースに語ったところによると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月18~20日の下院選の投票期間が過ぎたところで、10月初めにも30万~50万人を招集する可能性があるという。いかにもニュースになりそうな数字だが、それだけでは誤解を招く。
増員すれば必ず戦力が増すわけではない。しかもロシアが既に失った兵士と、今頃かき集める兵士では質が異なる。
ウクライナ政府の集計によると、今年だけでも既にロシア兵は約13万1000人が死亡し、約9万3000人が負傷。その多くはいわゆる職業軍人で、突撃隊員やドローン操縦士、下級将校も含まれる。未熟な新兵では、そういう人材の代わりになれない。
「戦争を長引かせることはあっても、根本的に戦争の結末を変えることにはなるまい」と、米保守系シンクタンク「民主主義防衛財団」のジョン・ハーディは本誌に語った。
前線地帯で活動する支援団体「ホープ・フォー・ウクライナ」を率いるユーリー・ボイェチコは、ロシアの真の弱点は兵員数ではなく戦力の質だと指摘。増派しても「勝利」どころか「消耗戦を続け、前線での損失を吸収し、防御を強化できるだけ」だと言う。
統計もそれを裏付ける。ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は7月の退任前に、東部ドネツク州でロシア軍は1平方キロを確保するために400人以上の死傷者を出していると述べた。