Andrea Shalal
[ワシントン 16日 ロイター] - トランプ米大統領は14日、イランに対して強力な経済的打撃を与える方針を表明した。その前日にはベセント財務長官が「来週にも、これまでに例のない措置をイランに科す」と述べた。
米国と国連、欧州連合(EU)は1970年代後半以降、イランの核開発計画、人権侵害、武装組織への支援などを理由に、制裁や貿易禁輸、資産凍結を実施してきた。今年2月にイランとの戦争が始まって以来、米国は海運、エネルギー、金融分野で追加制裁を発動し、さらに海上封鎖も開始している。
米財務省外国資産管理局(OFAC)のデータによると、第2次トランプ政権の発足以来、同局は1000人を超える個人や船舶、航空機に対して制裁を科した。最近の措置では、イランの「影の船団」と呼ばれる原油輸送網、海運保険会社、イランの兵器調達を支援する個人や企業、さらにデジタル資産取引所などが標的となった。またイラン関連とみられる約5000億ドル相当の暗号資産(仮想通貨)も凍結された。
複数の専門家の見立てでは、トランプ政権にはさらに以下のような選択肢が残されている。
◎中国「ティーポット製油所」への制裁
「ティーポット製油所」と呼ばれる中国の独立系製油所は、中国全体の精製能力の約4分の1を占める。これらの事業者は利益率が非常に低く、時には赤字で操業している。ケプラーの2025年データに基づくと、中国はイランから輸出される原油の80%超を購入しており、その多くを独立系製油所が引き受けているため、イランとの取引を支援する企業などに制裁を科す「二次制裁」の対象となり得る。
過去の米国の制裁によって、大手の独立系製油所はイラン産原油の購入を控えるようになった。しかし制裁専門家の話では、多くのティーポット製油所は米国金融システムとの接点が少ないため、比較的制裁の影響を受けにくいという。
◎中国の銀行への制裁
OFACはこれまで、中国や香港に拠点を置く複数の企業に対し、イラン産原油取引で数十億ドル規模の資金決済を行い、さらに兵器調達を支援したとして二次制裁を発動してきた。米財務省は中国の大手銀行2行に対しても、イラン関連資金がそのシステムを通じて移動していることが確認されれば、二次制裁の対象になり得ると警告している。ただ現時点では正式な制裁指定には踏み切っていない。
複数の専門家は、米当局が名前を公表していないこの2行に正式な制裁を科した場合、あるいは追加制裁を導入した場合、中国の大規模金融機関全体に萎縮効果をもたらす可能性があるが、中国政府による報復措置を招く恐れもあると警告している。
一方で今年後半に予定されるトランプ氏と習近平国家主席の会談を前に、トランプ政権が米中間の緊張を抑えようとしているという事情もある。中国が先端技術の生産に不可欠な重要鉱物の輸出を制限する可能性を懸念しているためで、米国や同盟国は依然として独自の供給網構築を進めている途中だ。
◎「モグラたたき」型の制裁強化
米国は今後も、イランや中国、湾岸地域の個人・企業を標的にして、イランが制裁を回避して戦費を調達するのを支援するネットワークを取り締まってもおかしくない。米財務省は最近、イランが原油収入を輸入品の購入に充てるための取引を仲介する企業群に対する制裁を発表した。しかしオブシディアン・リスク・アドバイザーズのブレット・エリクソン氏は、こうした措置は「モグラたたき」に過ぎず、イランの行動変化につながっていないと指摘する。制裁対象企業が消えても、イランは新たな企業を設立して代替しているためだ。
それでも民主主義防衛財団(FDD)の制裁専門家ミアド・マレキ氏は、ベセント氏の発言がイランの原油輸送業者、購入者、外貨交換業者に対する取り締まりをさらに強化する方針を示唆したと主張。また米国がホルムズ海峡で海上封鎖を行っていることを踏まえ、イランの貿易輸送能力を弱体化させるために航空分野への追加制裁が実施される可能性もあると付け加えた。
◎陸上封鎖
一部の米国およびイスラエル当局者の間では、イランに対する陸上封鎖も議論されている。これを実行するにはイラク、トルコ、パキスタン、アフガニスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、アルメニアといった周辺国の協力が必要となる。
トランプ政権はアフガンを除くこれらの国々とは一定の関係を維持している。ただアフガンとの国境地帯は山岳地帯で、監視が極めて困難だ。最近米財務省に対して100億ドル規模の通貨スワップ枠を求めたパキスタンや、米国製F35戦闘機計画への復帰を模索するトルコに対してはトランプ氏が一定の影響力を持つかもしれない。
陸上封鎖が実施されれば、食料やエネルギー、繊維製品などの輸入が止まり、イラン国民への圧力は高まる。しかし複数の専門家は、その実施は極めて難しく、実行されても抗議活動や国内からの政治的圧力につながるとは限らないとみている。
◎二次関税
トランプ氏はこれまで、イランと取引する国々からの輸入品に対して関税を課す考えを繰り返し示してきた。だがその法的根拠となっていた措置については連邦最高裁判所が無効と判断している。
一方、米上院はこのほどロシア制裁を柱とする包括的な法案を可決した。この法案には新たな対イラン制裁も盛り込まれており、イランとの商取引や兵器調達を支援する国々に対してトランプ氏が関税を発動できる新たな権限が与えられる可能性がある。とはいえ同法案は今後、下院での可決が必要となる。関税条項に対しては野党民主党だけでなく与党共和党の一部議員からも懸念が示されており、審議は難航しかねない。