Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 30日 ロイター] - 高市早苗首相(自民党総裁)は30日、飲食料品にかかる消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を正式に臨時の党役員会で表明した。党内の意見を集約した上で、8月初旬にも方針を閣議決定する。関連法案は秋の臨時国会で審議される見通しだ。高市氏はかねて減税実現に強くこだわってきており、市場はこうした動きをある程度織り込んでいるとみられる。一方、ある政府関係者は「市場は誤解をしている」と警鐘を鳴らす。

<「動かなければ信頼失う」>

「消費減税は衆院選で国民と約束したものだ」。30日昼、自民党本部で開かれた臨時役員会の冒頭、高市氏は出席した党幹部を前にこう強調した。幹部から反対意見は出ず、減税を実現する方向で党内調整が始まることが決まった。高市氏があえて役員会で正式に表明したのは、党幹部を「味方」に付けることで、なお減税への不満がくすぶる党内の合意形成を円滑に進める狙いがあるとみられる。

実際、2日前に開かれた党税制調査会の会合では、出席議員の意見が割れた。岩屋毅・前外相は記者団に対し、物価高対策としては給付や社会保険料の軽減が適しているとの考えを示したうえで、「社会保障の基幹財源に手を付けるのはリスクだ。金融市場からも厳しく見られる可能性がある」と反対を表明。中谷元・元防衛相も「いまだに財源が明確になっていない。高齢化社会を支えているのは消費税だ。財源がなければどんな福祉も充実できない」と語気を強めた。

一方で、高市氏の方針を支持する声も多く聞かれた。出席議員からは、「消費減税は有権者の強い希望だ。衆院選の公約でもあり、臥薪嘗胆でこの道を進めるべきだ」との意見や、物価高に苦しむ国民のために「政府が動かなければ信頼を失う」との声が出た。

賛否を明確にしないまま、悪影響が懸念される農業・漁業や外食産業への支援策を先に示すよう求める意見もあった。また「マーケットとの対話を丁寧にやっていかないといけない」と語った出席者もいた。

<「大いなる誤解だ」>

経済政策を担う政府関係者は、高市氏が党内で強い求心力を維持していることなどから、「市場は衆院選の公約通り、2年後に税率を元に戻すと信じ切っているようだ」と話す。その上でこう述べた。「そう簡単ではない。個人的には元に戻すのは無理だと思う」

政府与党は秋の臨時国会で審議する関連法案に「景気条項」を盛り込まない方針だ。税率を戻す際、経済状況にかかわらず、選挙公約通り減税を終える意思を明確にする狙いがある。

それでも同関係者が「無理」と口にするのは、政治日程に起因する。減税は27年4月から始まり、29年に期限を迎える。次期参院選はその前年、28年の夏。期限を間近に控えたタイミングで野党が「減税の延長」を主張すれば、与党が不利な選挙戦を強いられかねないというわけだ。自民内には「選挙のことを考えれば税率を戻せるわけがない」(閣僚経験者)との本音は大きく渦巻いている。

関連法案に「景気条項」が入らずとも、期限前に新たな法整備をすれば減税延長は可能だ。税制に精通する自民関係者は、税率を戻せるかどうかは「その時の経済の状況次第になるだろう」と本音を明かした。前出の政府関係者は、市場が高市政権の「強さ」を過信しているとし、「物価が上がれば、税率を戻す際の痛税感も増す。市場が2年後に必ず税率が戻ると考えるのは、大いなる誤解だ」と改めて強調した。

税率は本当に2年後、元に戻せるのか。木原稔官房長官は30日の記者会見で、ロイターの質問に、消費減税は給付付き税額控除の実施までの「つなぎ」と位置付けていると強調した。「2年間の減税が終了した後は現行の8%に戻すことを想定している」との高市氏の発言を改めて紹介。その上で、政府の「社会保障国民会議」の中間取りまとめに、減税終了時には「給付に円滑に接続するために必要な措置を講ずるべき」との意見が記載されている点に触れ、「政府与党の方針を早急に検討していきたい」と答えた。

<「言えるはずがない」>

もっとも、高市氏にとって減税の実現は起死回生の一手になる可能性もある。特別国会の終盤、高市内閣の支持率は一気に下降した。読売新聞社が7月24ー26日に実施した全国世論調査で、高市内閣の支持率は57%(前回6月19ー21日調査69%)に急落し、昨年10月の内閣発足以降最低となった。皇室典範改正や副首都関連法案への政府与党の対応が影響したとみられるが、結果は無視できない状況だ。

これに対し、消費減税の実現をきっかけに有権者の支持を取り戻したいと期待する声は、党内で多く聞かれる。政務三役経験のある自民衆院議員は、心情をこう吐露した。「この状況で減税しませんなんて言えるはずがない。公約に掲げたのだから守る。それだけだ」

高市氏が置かれた状況を、専門家はどう見ているのか。

元自民党政調幹部職員で政治評論家の田村重信氏は、内閣支持率の下落を「極めて深刻なことだ」と見る。有権者からの人気が政権の一番の強みだったからだ。「経済対策では国民の期待に応えられない一方で、皇室典範改正は一生懸命進めた。『女性天皇』を強く否定したことも、無党派層の離反を招いた」と分析した。

消費減税については「実現できなければ支持率はさらに下がるだろう」と話し、政権の浮揚を考えれば実現を目指すのは当然だと述べた。その上で、臨時国会までに実施すると言われる内閣改造・党役員人事が今後の焦点だと指摘。「人事でどのような刷新感を出せるのかが、今後の高市政権を占うカギだ」と語った。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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