学術誌『キャンサー・リサーチ』に掲載された論文によると、シルデナフィルは「PDE5」という酵素の働きをブロックする。これによりシグナル伝達分子「cGMP」の濃度が高まる。cGMPには血管を広げて血流を増やす働きがあり、これがバイアグラがED治療薬として作用する仕組みだ。

しかし研究チームは、cGMPに別の作用もあることを突き止めた。細胞内でコレステロールを運ぶタンパク質と結合するのだ。その結果、がん細胞は増殖や転移に必要なコレステロール不足に陥る。がん細胞はこの不足状態に特に弱いため、他の部位へ広がる能力が制限されるという。

今回の研究結果は、マウス実験やヒトの培養細胞、そしてイスラエルの医療機関クラリットが保有する約500万人分の20年間に及ぶ医療データに基づいている。シルデナフィルと、体内のコレステロール生成を抑えるスタチン系薬剤を組み合わせると、転移を抑える効果がさらに高まることが示された。

実際にクラリットの医療記録を分析したところ、シルデナフィルを服用していたがん患者は生存率が有意に高く、スタチンも併用していた患者ではその傾向がより顕著に表れている。

Reference

Erez, A., et al. (2026). PDE5a Inhibition Restricts Cancer Metastasis by Disrupting NPC1-Mediated Cholesterol Trafficking Through a Non-canonical cGMP-Dependent Pathway. Cancer Research. https://doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-26-1818.

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