Nina Lopez Charlie Devereux Aislinn Laing

[ベダル(スペイン) 22日 ロイター] - スペイン南部にあるアンダルシア自治州の山村ベダルとその近隣で7月9日、山火事から逃れようとして12人が死亡した。地方当局は一部の住民が、自宅にとどまるようにという勧告を無視したと主張した。

だがロイターの取材に応じた5人の住民や生存者によれば、いかなる指示も届かなかったという。スペイン史上最悪の部類に入る山火事が迫る中、教会の鐘やメッセージアプリ「ワッツアップ」のグループ、地元当局者による戸別訪問といった断片的な手段で知らされたに過ぎないと語った。

英国出身の元技術責任者であるボブ・レイトンさんは、火災についての警告も、どうすべきかについての指示も受け取らなかったという。彼は自ら避難しようと決意し、山火事が自宅をのみ込むわずか1分前に自動車でその場を離れた。彼の住むパラヘ・エル・クラトはベダルから約2.5キロメートル離れた小さな集落で、避難しようとして命を落とした犠牲者のほとんどはそこに住んでいた。

その後、病院で死亡した女性を含め犠牲者は計13人となった。

「もし自宅にとどまるよう指示を受けていたら、私たちは生きてはいなかっただろう。家は跡形もなく燃え尽きたのだから」とレイトンさんは語った。

「私は脱出路を知っていた。ほかの人たちも同じ道をたどろうとしたが、少し違うルートを選んでしまったため、生き残れなかった。周囲は地獄のような炎に包まれていた」

ベダルの中心部は被害を受けずに済んだが、パラヘ・エル・クラトでは一部の家屋が焼失した。

レイトンさんの近隣住民8人は、同じ道をたどってパラヘ・エル・クラトから逃れようとしたが、炎に道をさえぎられた。車を乗り捨てて徒歩で逃げたものの、火災に巻き込まれ死亡した。別の複数の車に乗っていた4人も犠牲となった。

火災が集落に達したのは午後8時頃で、最初の通報から3時間半後のことだった。その時点で既に、主要な避難道路は遮断されていた。

アンダルシア州の防災責任者アントニオ・サンス氏は、今回の火災で携帯電話への緊急一斉メールを見送った理由について、避難が必要な地域と自宅待機を求める地域が混在しており、特定のコミュニティーだけに絞った通知ができなかったためだと説明した。

だがマドリード、アラゴン、カスティーリャ・ラ・マンチャなどの州では前週、山火事対策としてこのシステムを活用していた。

アンダルシア州政府は11日の声明で、ベダルの村長らが地域の戸別訪問を行って指示を出しており、パラヘ・エル・クラトの被災者に対してもその場にとどまるよう伝えていたと述べた。

だが犠牲者の1人であるスタニスラス・バードンクトさんの妹によると、兄は避難のための時間的猶予を与えてくれるはずの警告を受けていなかった。

「もし火災発生時に緊急警報システムによる連絡があれば、つまり兄が火事に気づく数時間前に連絡が取れていれば、兄とその隣人7人は今も生きていただろう」と彼女は語った。

彼女と家族は町長やほかの犠牲者の遺族と話をしたという。親族の中には、避難すべきかどうか親しい人々と話し合った者もいた。

「亡くなった人たちは、手遅れになる前に公式な連絡を一切受けていなかったようだ」と彼女は付け加えた。

アンヘル・コリャード村長は取材要請を拒否。ベダル村役場はコメントを求めるメールや電話に回答しなかった。

現地警察の広報担当者は、火災に関する全ての関連事実について調査中だと説明したが、事件が非公開とされているため、それ以上のコメントは控えた。アンダルシア州高等裁判所の広報担当者は、判事は火災の原因に基づいて調査を進めていると述べた。

<延焼の加速>

欧州で山火事発生の頻度が増え、延焼スピードも加速している中、明確な避難計画や安全確保の詳細については、火災が発生するずっと前の段階で情報提供を行わなければならないと専門家らはみている。

「住民は地域の危険性、避難経路、そして基本的な自己防衛策についてあらかじめ把握しておかなければならない。そのためには、点在する住居の位置を把握し、避難計画を立て、訓練を実施することが重要だ」。グランカナリア島ラス・パルマス大学の地理学教授、フェルナンド・メディナ氏はこう述べた。

ベダルを含むアルメリア県の103の自治体のうち、山火事などの緊急事態に対応する計画を整備していたのは42自治体だった。アンダルシア州政府のデータによると、危険地域にある自治体で、4年ごとに火災対策計画を更新するという要件を満たしていたのはわずか9自治体だった。

ベダルの緊急対応計画が最後に承認されたのは2019年であり、現在改訂作業が進められているという。この自治体は山火事の危険地域に分類されている。計画の不備について問われた報道官は、同州政府は助言や支援を提供するが、緊急計画を更新するのは各自治体の責任だと述べた。

ベダル村役場は、避難計画や山火事の避難訓練を実施したかどうかについて、複数回にわたるコメント要請に回答しなかった。

アルメリア県政府は2月、ベダル近郊のロスガジャルドスで、49の自治体と緊急時計画の更新プロセスを効率化する方法について協議する会議を開催したとオンライン声明で発表した。ベダル村役場は、この会議に参加したかどうかを尋ねるメールに回答しなかった。

ベダルの中心部近くに住んでいた人々には、警告を受け取った者もいた。ヤギ飼いのワヒード・ムムタズさんは、午後10時30分に警察が訪れ、避難するよう告げられたという。

ベダルの飲食店でウエーターとして働くフアン・ペドロさんは、火災発生直後に教会の鐘が鳴り始めたのを聞いた。役場が運用するワッツアップのグループを通じて、避難を促すメッセージも届いたという。

「べダルの町では、煙が見え、鐘が聞こえ、火災が知れ渡ると皆、すぐに避難が必要だと察した」と彼は述べた。

だが、全員がそのワッツアップのグループに入っていたわけではなかった。

ペドロ・ティニーさん(31)は遠くから火災を目撃し、祖母と叔母とともに車で逃げるため大急ぎで家に帰った。避難勧告は一切受けていなかったという。

「村から逃げなければならないという『直感』があった。それが私たちの命を救った」と彼は語った。

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの緊急時計画・管理名誉教授であるデービッド・アレクサンダー氏によると、山火事は風向き次第で突然向きを変えるため、当局が速やかに指示を出すことは難しいという。

ただ今回の火災における連絡の混乱は、行政側の準備不足を示していると同氏は話した。仮に特定の地域に絞った具体的な指示が送れなかったとしても、せめて緊急警報を出して火災の発生を警告すべきだったとも述べた。

レイトンさんは、今後差し迫った危険を住民に警告する方法について、当局が住民と協力して計画を立てるよう強く求めた。

「誰かを責めるつもりはない。全てがあまりにもあっという間に起こったからだ。だが、責任転嫁を図ろうとする当局の姿勢は極めて卑劣だと感じる」とレイトンさんは怒りをあらわにした。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。