Idrees Ali Phil Stewart

[ワシントン 22日 ロイター] - イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、紅海でサウジアラビアに対する「海上封鎖」を実施すると警告した。これによって既に各地でイランの攻撃阻止に従事している米軍にとって、新たな戦線が生まれて資源配分などの対応に苦慮する可能性が出ている。現職の米政府高官と元高官らがこうした見方を示した。

フーシ派は20日、サウジの港での船舶の積み降ろしを認めないと表明。これが実行されれば、サウジ産原油の輸出が妨げられ、世界の石油供給の7%がさらに滞る恐れがある。

米軍が駐留するサウジは、現時点で米国に軍事支援を正式に要請してはいない。ただトランプ大統領は21日、記者団に対し、世界貿易の重要航路である紅海でフーシ派が航行妨害に出た場合について、「もしそのような事態が起きれば、われわれが対処する。以前にもフーシ派への対応を行ってきた」と語り、米国が関与する可能性を示唆した。

ところが、米軍にとって事態はそれほど単純ではないかもしれない。

フーシ派は機動力と持久力に優れた武装勢力として知られ、これまでサウジ主導の空爆作戦や米軍による攻撃にも耐え抜いてきた。フーシ派への軍事活動を本格化させれば、イランとの戦闘やペルシャ湾でのイラン封鎖作戦に投入されている米軍戦力を一段と圧迫することになる。

元米国防総省高官で現在はシンクタンク「中東研究所」に所属するジェイソン・キャンベル氏は「十分な戦力を持っているとはいえ、動きが活発な2つの前線に資源を振り分けなければならなくなる」と指摘する。

キャンベル氏の分析では、紅海での脅威に対処するためには、ペルシャ湾に展開している米海軍艦艇の一部をイエメン周辺へ移動させ、フーシ派への攻撃やミサイル防衛任務に充てる必要が生じる可能性がある。

フーシ派が紛争に加わる可能性は、今回の戦争がトランプ氏の当初の説明を超えて拡大・複雑化し、同氏の政治的負担が一段と重くなっていることを示す新たな事例だ。トランプ氏は当初、限定的な空爆によってイランの屈服を促す作戦と位置付けていた。

また、米海軍艦艇や航空機がフーシ派のドローンやミサイル迎撃を継続的に行うことになれば、専門家が以前から懸念してきた米軍の弾薬や防空ミサイル在庫の減少が一段と深刻化する事態も起こり得る。

米国防総省のショーン・パーネル報道官は、米軍には大統領が選択する時と場所で任務を遂行するために必要な能力が全て備わっていると説明。「米軍は複数の統合軍にまたがる作戦を成功裏に実施しており、国民と国益を守るための十分な戦力を維持している」と述べた。

<フーシ派の耐久力>

フーシ派はこれまでも驚くべき耐久力を示してきた。サウジ主導のアラブ有志連合軍は長年にわたり空爆を続けたが、山岳地帯を拠点とするフーシ派を打倒することはできなかった。現在イエメンはフーシ派が大部分を実効支配している。近年行われた米軍による大規模な空爆も、フーシ派の活動能力を完全には奪えなかった。

第1次トランプ政権で中東担当の国防次官補代理を務めたマイケル・マルロイ氏は「フーシ派は過去にも紅海やバベルマンデブ海峡で海上交通を妨害する能力と意思を何度も見せてきた」と語る。

バイデン前政権下では、紅海の重要航路を守るため米軍がフーシ派拠点への空爆を実施。さらにトランプ政権は昨年、イエメン沖で米艦艇や商船を攻撃していたフーシ派への軍事作戦を強化した。

しかし複数の専門家は、これらの作戦でもフーシ派の海上脅威能力を完全に排除することはできなかったとみている。

昨年の約2カ月間に及ぶ作戦では、空母2隻をはじめ、多数の軍艦、戦闘機、さらにはB-2ステルス爆撃機まで投入するなど、米軍は大規模な戦力を動員した。

<米軍戦力が抱える制約>

世界最大規模の軍事予算を誇る米軍だが、当局者らは戦力や装備には依然として限界があると認める。実際、イエメン作戦で必要となりそうな戦力の多くは、現在イランとの戦闘対応に投入されている。

ある米当局者は「われわれは既に忙殺されている」と語り、一部の艦艇はカリブ海での任務に続き中東へ展開したため、通常よりも長期間にわたって海上活動を続けていると説明した。

長期任務は兵士の負担を増大させるだけでなく、艦艇には定期的な整備のために帰港しなければならない制約もある。

現時点で中東地域には20隻を超える米海軍艦艇と数百機の軍用機が展開し、さらにイラン情勢への対応強化のため、追加部隊も派遣されつつあるという。

こうした状況から、イエメン周辺で新たな軍事作戦を展開する余力は限られている。特にフーシ派の最新戦力を把握するためには情報収集能力も必要で、米軍の情報資産も分散されることになる。

米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のマーク・カンシアン氏は、紅海で第2戦線が形成されれば米海軍への負担が増すとの見方に同意しつつ、フーシ派側にも弱点があると話す。

カンシアン氏は、フーシ派の主要支援国であるイランへの封鎖措置が続いており、武器や物資の補給に苦しむ可能性があると指摘。「米軍の封鎖は完全ではないが、非常に効果的だ。そのためフーシ派が長期間にわたり作戦を継続するのは容易ではないだろう」と述べた。

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