「新しい学習方法を使えば、学ぶ速さを従来の10倍ほどにできる」
中国を代表するAI教育の専門家で、教育プラットフォーム「スクワレルAI」の創業者の一人、デレク・ハオヤン・リーはそう語る。
中国をはじめ世界各地で、これまでに延べ4300万人を超える生徒がスクワレルAIを利用してきた。個々の理解度に応じて教材を調整する「適応学習」によって、それぞれのペースで必要な内容を教え、従来よりもはるかに速く、先まで学べるよう設計されている。
アメリカ進出も視野に入れる同社の急成長は、中国の教育現場でAIの役割が拡大していることを物語る。中国政府は、子供たちにAIを使わせて学力を向上させるだけでなく、その基盤となる技術も習得させようと強力に後押ししている。
「今の中国はそれほど進んでいるわけではない。だが5年後には、中国とほかの国の間に非常に大きな差がつくだろう」と、リーは上海にあるスクワレルAIのオフィスで本誌に語った。
中国の国務院新聞弁公室によれば、中国政府は1年前、小学校から中学校、高校までを対象とする「段階的なAI教育システム」の構築を指示した。子供たちにAIを教えるだけでなく、「AIを活用した指導能力を教員養成の枠組みに組み込む」ことも目的としている。
世界第2位の経済大国である中国にとって、教育の強化はアメリカとの国際競争を勝ち抜く上で重要だ。出生率が急低下し、次世代の一人一人が担う重みが増すなか、その重要性はさらに高まっている。
アメリカでも教師はAIを活用している。私立校ネットワークのアルファ・スクールのように、AIを教育の中核に据える学校もある。それでも、共産党政権による中国政府の後押しは、電気自動車や太陽光発電、高速鉄道の建設と同じように、AI教育の普及にさらなる勢いを与えている。
「中国政府は、どのようなツールを使い、どのようなカリキュラムを導入するかについて、方針を打ち出せる。アメリカにはそれに相当する仕組みがほとんどない。あるとすれば、予算配分の優先順位や、特定分野の重要性を示す大統領令くらいだ」と、プリテン・サウンダーシャーは言う。
ハーバード大学で教育を学んだサウンダーシャーは、ペダゴジー・ベンチャーズのCEOで、近著に『Ethical Ed Tech: How Educators Can Lead on AI and Digital Safety in K-12(エシカル・エドテック──幼稚園から高校までのAIとデジタル安全を教育者がどう主導するか)』がある。
「全ての生徒に特定の授業を受けさせる全国的な義務付けはない。それを実現する制度も政治的な基盤もない。そのためアメリカでは、取り組みが非常に細分化され、大きな格差が生まれている」と、サウンダーシャーは語った。