立法機関も十分に機能せず

司法制度を支える仕組みも脆弱なままだ。現時点で政府には、新たな法律を制定する立法機関すら十分に機能していない。その点も、「移行期の正義」の取り組みがなかなか本格化しない要因の1つなのだろう。

その歩みの遅さは、国の根本的な変革を望む多くのシリア人の間で疑念も生んでいる。彼らが懸念するのは、比較的地位の低い少数の人物だけを裁き、その犯罪を生み出した体制そのものには踏み込まないことだ。

「タダモンの虐殺者」のような人物からは、指揮命令系統や、彼らが支えた残虐な体制について証拠を引き出すべきだと考えている。

「アムジャド・ユセフは即決で処刑するより、独立した法廷で生かして裁くほうがはるかに価値がある」。シリア人権ネットワークのファデル・アブドルガニ代表は、4月のユセフ拘束直後にそう書いた。「彼が国家の管理下にある今こそ、背後にある組織を広く明らかにし、遺体の所在を突き止め、犯罪と指揮命令系統との関係を立証する機会にするべきだ。責任追及の手を実行犯だけでなく、犯罪を命令し、支援し、覆い隠した者たちにまで広げるべきだ」

だが、拘束後に公開されたユセフの供述は、期待には程遠いものだった。内務省が公開した取り調べ映像の中でユセフは、犯行は全て「自分だけの判断」だったと述べ、単独犯行を主張した。政府に批判的な人々は「部分的で見せかけだけの正義」に終わることを懸念している。

情報と引き換えに訴追を免れた者も?
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