トランプは防衛費の問題だけでなく、リベラルな難民政策を取るメルケルを目の敵にしてきた。大統領選に出馬した2015年の時点で既に、メルケルの難民政策を評価して「今年の人」に選んだタイム誌を「ドイツを破壊する人間を選んだ」と揶揄していた。

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カナダで行われた昨年のG7首脳会議ではメルケルとトランプがやり合った JESCO DENZEL-BUNDESREGIERUNG/GETTY IMAGES

トランプという厄介な敵

2017年3月にホワイトハウスを訪問したメルケルを、トランプは露骨に侮辱した。撮影のために執務室で並んで座ったときも、握手しようとしなかった。記者たちが去ると、トランプはメルケルに言ったものだ。「アンゲラ、あなたは私に1兆ドルの借りがある」

オバマ政権でNATO大使を務めたイボ・ダールダーによれば、この数字はトランプの側近たちが計算したもので、2006年以来、欧州の同盟諸国が防衛費としてアメリカに払うべきだった金額の合計だという。

メルケルがトランプとの関係をいかに処理するかによって、大西洋の両岸の未来が決まるだろうとカプチャンは言う。「ヨーロッパが地政学的に頼みの綱としていたアメリカの抑止力が利かなくなる日に備えて、彼女には新たな国策が必要になる」

メルケルは、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が提唱した欧州軍の創設を支持している。「他人に頼り切ることができた時代はもう終わった」と彼女は述べている。「私たちは今後、自分の運命を自分の手に握らなくてはならない」

それは難しい注文だ。だが政治家としてのキャリアの最終段階を迎えつつあるメルケルに、動揺した様子は見られない。最近、ある技術関連の会議で演説した彼女はちょっと間を取り、数年前にインターネットを「未知の領域」と呼んで嘲笑された思い出を自虐的に語った。「それは私にとって猛烈な逆風の嵐だった」

「逆風の嵐」とは言い得て妙。向こう何週間か何カ月か、メルケルにもメイにも前代未聞の逆風が吹き続けるのは間違いない。

<2019年2月12日号掲載>

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※この記事は「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集より。詳しくは2019年2月12日号 「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集をご覧ください。
昨年12月11日、雨降りしきるベルリンで、1台のベンツがドイツ首相官邸に到着した。後部座席にはイギリス首相テリーザ・メイの姿。ブレグジット(イギリスのEU離脱)協定案の議会採決を延期して欧州3都市歴訪の旅に出て、さらなる譲歩を引き出す考えだった。
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