Makiko Yamazaki Tamiyuki Kihara
[東京 21日 ロイター] - 日米関税交渉に伴い両国が合意した5500億ドル(約89兆円)の対米投融資に、複数の大手米銀が参画する方向で調整が進んでいることが分かった。多額の融資に伴うドル調達が日本の金融機関の課題となる中、豊富なドル資金を有する 米銀の参画はプロジェクト推進の追い風になる可能性がある。事情に詳しい関係者3人がロイターの取材に明らかにした。
複数の関係者によると、参画を検討する米銀にはJPモルガン・チェースが含まれる。日本政府関係者は「政府としてはドルが調達できればメガバンクでも米銀でも構わない」と述べ、米銀がプロジェクトに参画するとの見通しを明らかにした。どのプロジェクトにどの程度の融資を提供するかは現時点で分かっていないが、別の関係者は米銀の参画が近く合意されると話した。
ロイターはJPモルガンにコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。経済産業省米州課は「米銀の参画について決まっていることはない」とした上で、「米銀側の判断になる」と回答した。
対米投融資は、米国が日本からの輸入品に課す関税を15%に引き下げることの見返りとして、両国が昨年7月に合意した枠組みだ。エネルギーや重要鉱物などの分野のプロジェクトに対し、日本から米へ最大5500億ドル規模の投融資や融資保証が提供される。投融資額の約3分の1を政府系の国際協力銀行(JBIC)が提供し、残りを三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループが協調融資する。
しかし、巨額のドル建て融資が日本のメガ3行の課題になっていた。関係者によると、各行は外貨調達コストの増加に加え、対米融資の拡大によって他の案件への貸し出し余力が低下することなどの懸念を抱え続けてきたという。民間銀行による融資には政府保証が付くものの、関係者の一人は「メガバンクによるドル調達は予想以上に難航した」と明かした。一方、ドルを潤沢に調達・供給できる米銀にとって、日本の政府保証がある融資案件はリスクを抑えやすい。
日本のメガ3行は、いずれもコメントを控えた。
日米はこれまで2回にわたり投融資のプロジェクトを発表している。今年2月発表の第1弾には、産業用合成ダイヤモンドの製造プロジェクト、米産原油の輸出インフラプロジェクト、天然ガス火力発電プロジェクトが含まれた。3月発表の第2弾には、GEベルノバ日立によるテネシー州とアラバマ州での小型モジュール式原子炉(SMR)の建設計画や、ペンシルベニア州とテキサス州での天然ガス火力発電施設の計画が盛り込まれた。
これらを合わせると投融資額は1000億ドルを超えるが、複数の関係者によると、日本は既に米側から第3弾の対象となり得るプロジェクトのリストを受け取っているという。経産省米州課はロイターの取材に「第3弾のプロジェクトが絞り込まれ、具体的に日本政府内で検討が進んでいる事実はない」とした。
これまでに融資が確定しているのは22億ドルにとどまる。日本側にとっては米銀の参画によりドル資金調達への圧力が緩和される可能性があるものの、一部のプロジェクトは返済完了までに数十年かかるとみられ、関係者からは「依然として大きなリスクが残る」との声も出ている。
(山崎牧子、鬼原民幸 取材協力:浦中美穂 編集:久保信博)