静岡県の駿河湾を横断し、静岡市の清水港と西伊豆・土肥(とい)を結ぶ旅客船の駿河湾フェリーでこの夏、観客参加型演劇“イマーシブシアター”の公演が行われる。出演するのは、シェイクスピアやギリシャ悲劇といった重厚な作品を得意とする静岡県立の劇団SPAC(静岡県舞台芸術センター)だ。
フランスをはじめとした海外公演でも高い評価を受けてきた同劇団が、フェリーに乗り込んでミステリー仕立ての謎解き劇に出演する……。一見すると意外な組み合わせだが、この企画の背後には、静岡県にとって重要な海上交通インフラの存続をかけた、切実な事情がある。
今回のイマーシブシアターは「駿河湾フェリー×ミステリークルーズ」と名付けられた一連の企画の第3弾にあたる。第1弾は、スマートフォンで遊べる周遊型の「AR謎解きラリー『時を超えた金塊をさがせ!』」とARで富士山を合成して撮影できる「富士山フレーム」。第2弾は、毎週土曜日に先着配布される謎解き冊子「キャプテンからの挑戦状」。
そして第3弾が、船内と土肥港周辺、土肥金山を舞台にした本格的なイマーシブシアター「THE ROAD TO GOLD―まだ見ぬ宝へ―」だ。脚本・ゲーム演出はマーダーミステリー(体験型推理ゲーム)制作集団のSally、出演・演出をSPACが担っている。
観客が宝探しの一員になる7時間
物語の舞台は、かつて佐渡金山に次ぐ産出量を誇ったという土肥金山。「土肥には黄金の宝が祀られている」という伝説をめぐり、50年に一度の宝探しに参加者自身が加わるという設定だ。
参加者は清水港からフェリーに乗船する。往路の船内で自己紹介やミッションをこなしながら互いの人物像を探る「フェーズ1」、土肥到着後に金山で地図の暗号を解いて宝探しをする「フェーズ2」、そして帰路の船内ですべての真相が明かされる「フェーズ3」という三部構成で、所要時間は約7時間に及ぶ。
土肥金山ではランダムに配られたカードを参加者同士で交換して宝の地図を完成させ、地図の裏にある暗号を解読する。ただし一人では解けない仕組みになっており、複数人で協力して初めて宝のありかがわかる仕掛けだ。また金山内の博物館展示に関わる問題も出題され、施設をくまなく回らなければ謎は解けない。