政府の財政悪化は当然のことながら円安要因ではあるものの、これまでは潜在的リスクという位置付けだった。だが、今後の円安見通しが明確化する決定打となってしまったのが骨太の方針である。
今回の方針では「財政健全化」という文言が消えただけでなく、日銀の金融政策にクギを刺す内容まで盛り込まれた(その後修正を検討)。日銀は正常化に対して後ろ向きではないか、との疑念が生じるなか、政府が駄目押しで緩和的スタンスを継続するよう求めた格好であり、市場で円安予想が激しくなるのはむしろ当然といってよいだろう。
テクニカルな要因での円安ではない
一連の出来事をきっかけに海外メディアの報道も大きく変わっており、「日銀にはもはやオプションは残されていない」「一部の投資家は1ドル=200円を視野に動き始めている」といった指摘が相次いでいる。日本円を取り巻く状況は百八十度変わったとみてよいだろう。
いま進んでいる円安は日米金利差などテクニカルな要因で発生しているのではなく、緩和策継続による円の希薄化と、政府の財政悪化という構造的要因によって引き起こされている。逆に言えば、この状況を改善できなければ日本円は長期にわたって大幅な下落に見舞われる可能性が高い。
これまでの時代であれば、「円安になれば輸出企業の利益が増える」といった無邪気な議論も許容されたかもしれない。だが、そうした牧歌的な時代は完全に過去のものとなった。円の価値は日本人が持つ資産価値そのものであり、日本の国力と言い換えることもできる。私たちの富をどう維持していくのか、そのためにはどのような犠牲を払う必要があるのか、本気で議論しなければならない。残された時間は限りなく少ない。
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