<潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射し、「九段線」を「十段線」に拡張して威圧する中国を封じ込めるため、日本は有志国の先頭に立つべきだ>
5月28日、日本の高市首相とフィリピンのマルコス大統領は、両国間の海洋境界の画定に向けた交渉を開始することで合意した。両国は地政学上の摩擦を避けるため、協議を2国間に限定。台湾との3カ国の境界が重なる可能性がある点に踏み込まないとみられた。
しかし、このような配慮は無駄に終わった。台湾を自国の一部と見なす中国政府は翌29日に早速、日比の境界画定交渉を「完全に違法であり無効」と批判。台湾東方海域に海警局の船舶を展開させ、武装したパトロールを常態化させ始めた。
この強硬姿勢は、中国の長期戦略の一環と位置付けられる。中国政府は2013年、同国が南シナ海の地図上に引いているU字型の破線「九段線」(この線の内側を自国領と主張している)に10段目を加え、線を台湾の東側に延長した(十段線)。
この延長部分は日本の与那国島に極めて近接しており、のちに中国が発表した地図では、与那国島が太い線によって完全に覆い隠されていた。日本に向けて「われわれはあなたの門前まで来ているぞ」という露骨なメッセージを発したと言えるだろう。
この脅しに対して、当時の安倍首相は防衛体制の南西シフトを打ち出した。冷戦期以来の北方重視ではなく、中国を強く意識して南西諸島の防衛強化に転換したのだ。
一方、中国は最近も強硬路線を緩めていない。新しいところでは、7月6日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を実施したばかりだ。ミサイルはフィリピン上空を通過して太平洋に落下した。
こうしたグレーゾーンでの威圧を強める中国に対し、高市首相は安倍路線の継承者として対峙している。中国の経済的な脅しにも毅然とした態度を貫いてきた。