NATOの多国籍艦隊をモデルに
しかし、日本単独で中国を抑止することは容易でない。将来アメリカ政府が安全保障戦略でインド太平洋地域の優先順位を引き下げるようなことがあれば、日本の防衛体制は極めて脆弱になりかねない。そこで高市は、価値観を共有する国々との連携を強化するべく精力的な外交を続けている。
この地域の安定を大幅に高める上では、経済学の概念が参考になる。具体的には、以下の2つの点を前提に考えるべきだ。第1に中国が地域の安全に及ぼす脅威は「公的不法妨害」である。第2に、この問題を解決するための手だては「公共財」である。
現状では、この公共財を供給するための負担の大部分をアメリカと日本が担っている。しかし、真に有効な抑止力を築くには、世界規模の協調が不可欠だ。価値観を共有する国々が「対中防衛プレミアム」(追加的な軍事支出)と「中国の怒りのコスト」(中国が自国の意向に反した国の企業や個人に対して科す制裁的措置による損害)の双方を公平に分担する必要がある。
世界の半導体供給網の要である台湾に中国が侵攻すれば、経済的な打撃は昨今のホルムズ海峡危機の比ではない。東シナ海での中国の軍事的威圧に対抗するために、アメリカ、日本、EU、カナダ、豪州、ニュージーランドなどの国々は、それぞれが個別に「航行の自由」作戦で対応するのではなく、NATOの常設海上部隊をモデルに強力な多国籍海軍部隊を創設すべきだ。
新しい多国籍部隊に参加する艦艇は、自国の国旗に加えて共通の旗も掲げて任務に就くことになる。この部隊が台湾周辺と南シナ海で恒常的に活動することにより、中国の「十段線」にきっぱりとノーのメッセージを突き付けることができる。