Noriyuki Hirata
[東京 10日 ロイター] - 10日の東京市場では、前日発表の決算が好調とみられたファーストリテイリングが売られた一方、人工知能(AI)・半導体関連株が総じて堅調だった。日本株は6月後半から不安定な値動きだったが、四半期末の需給イベントをこなしたことで、再びAI・半導体関連株がけん引する相場に回帰する兆候と読み取る向きもある。
今期3度目の上方修正を発表したファーストリテ株は、大方の予想に反して売りが優勢となった。材料出尽くしのほかに意識されたのが、AI株への資金のシフトだ。
このところの日本株市場は、大きく「AI株」と「それ以外の銘柄」で括られ、日替わりで騰落が交代するシーソーのような相場つきとなっていた。ファーストリテ株は「それ以外」の代表銘柄の一角と目されてきた。好決算でも売られた様子からは、逆サイドに位置するAI株の復調を早くも意識する声は少なくない。
「需給イベントを過ぎ、レバレッジを掛けた個人投資家の売りも一巡し、一安心といったところだろう」と松井証券の窪田朋一郎チーフマーケットアナリストは話す。
年初からの急速な株高を経た6月末は、保有資産の比率調整に向けた売りが出やすかったほか、7月上旬には上場投資信託(ETF)の分配金ねん出に伴う換金売りが見込まれていた。加えて、大型上場(IPO)を経た米スペースXのナスダック指数への組み入れや韓国メモリー大手のSKハイニックスのADR(米預託証券)上場に伴う換金売りも相場の重しになっていた。
一方、今週前半までの調整局面では、一方向への過度なポジションを構築していた短期投資家が一定程度、退出したとみられている。松井証券店内では、信用買い残の残高が直近ピークをつけた6月26日の約5400億円から、8日までに5100億円に縮小したという。信用買いは将来の売り需要でもあるため、投機筋による下値攻めの動機になりやすいが「売り方にとって魅力がなくなり、ここから下に押し込まれる可能性は低くなった」と窪田氏はみている。
りそなホールディングスの武居大暉市場企画部ストラテジストは、7月上旬にかけての株安について、信用買いしていた個人の売りが、半導体関連株の一角の利益確定売りにさらされて増幅したとの見方を示す。需給イベントを通過し、投資家のポジション整理が進んだ中でのファストリ株売り・AI株買いとなったことは「AI相場への回帰のサインかも知れない」と松井の窪田氏は指摘する。
海外投資家は先物を10週連続で売り越しており「抜けていく資金が入ってきていなかった。割安感が出てくるような局面では、買いが入りやすい」とりそなHDの武居氏は指摘する。
<上値抑える信用買い残の積み上がり>
もっとも、AI相場の再開は、危ういバランスの上での株高となるかもしれない。東海東京インテリジェンス・ラボの山藤将太エクイティマーケットアナリストは、引き続き需給面から上値の重さへの警戒を示す。
東証のデータによると、足元の信用買い残は7月3日までの週に3週ぶりに減少に転じたが、6.7兆円と引き続き歴史的な高水準にある。信用買い残は潜在的な売り需要でもある。東証プライム市場の時価総額に対する比率は0.49%で、直近でこの比率が高まった6月後半の0.52%から低下した点は、松井店内と符合するが依然、高水準とみることができるという。
実際、過去に株価調整が大きかった局面を振り返ると、同比率が0.50%付近に高まっていた(チャート参照)様子が確認できる。
日銀の利上げと米景気懸念が重なって日経平均が歴代2位の下落率(下落幅では最大)を記録したいわゆる「令和のブラックマンデー」(24年8月5日)の直前期には0.57%だったほか、トランプ米大統領が相互関税を発表しリスクオフが強まった25年4月4日の急落前には0.55%程度だった。
松井店内の信用買い残も短期的に低下したとはいえ、年初の約3200億円に比べるとその後の株高を加味しても高水準とみることもできる。次の手掛かりは、巨額のデータセンター投資を続ける米ハイパースケーラーの決算と目される。今月下旬に控え、連邦公開市場委員会(FOMC)ともタイミングが重なる。
決算シーズンまでに買い残の比率がどの程度低下するかが焦点の一つになる。時間は限られており、整理が十分に進むかは不透明だが「少なからず整理が進むなら、決算で再び上を目指すといった展開も期待できるのではないか」と山藤氏は話している。