ブランド医薬品に100%の関税を課す──米トランプ政権が今年4月にそう発表すると、インドの製薬各社は胸をなで下ろした。対象が特許の切れていない先発医薬品に限られ、インドが得意とする低価格のジェネリック医薬品(後発医薬品)は対象外だったためだ。
しかし安心するのはまだ早い。中国への過度の依存という別のリスクが、インドはもちろん、欧米諸国の製薬業界をも脅かしている。
インドは世界のジェネリック医薬品の20%近くを生産する「世界の薬局」。アメリカでは2022年、高血圧や精神疾患、高脂血症など10の主要な治療領域のうち5領域で、処方薬の過半数をインド企業が供給していた。
ただし輸出面の強さとは裏腹に、医薬品の有効成分であるAPI(原薬)の多くはインド国産ではない。インドはAPIの約70 %を中国から輸入しており、その度合いは近年さらに高まっている。
26年度上半期、インドのAPI輸入に占める中国からの調達比率は約73%と、19年度の68%から上昇した。日常的に必要な抗生物質のペニシリン、解熱鎮痛薬のアセトアミノフェンやイブプロフェンでは、その割合は90%超だ。
実際、中国は世界のAPI生産の約40%を担っている。理由は明白だ。規模の経済、電力や排水処理のコスト安、継続的な国家支援である。
下流に連鎖する中国依存
インドの対中依存には地経学的な意味合いもある。サプライチェーン関連のリスクは通常、2国間の枠組みで捉えられるが、医薬品分野は違う。
アメリカやイギリスでも途上国でも、患者はインド製の製剤を頼りにする。そして、その製剤は中国から供給される原薬に依存している。つまり医薬品の世界では、サプライチェーンの各段階が前段階の脆弱性を引き継ぐのだ。
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【note限定公開記事】「世界の薬局」インドを揺さぶる、中国原薬依存という時限爆弾
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