<クリスチャン・ベール演じるチェイニー元米副大統領は大義なきイラク戦争を主導し、「国民に頼まれたことを実行した」と胸を張る>

タイトルの『バイス』が副大統領(Vice President)を示すことは明らかだが、「vice」には「悪徳」「邪悪」といった意味もある。

アメリカ合衆国第46代副大統領ディック・チェイニーは、多国籍エネルギー企業で軍事関連産業に深く関わるハリバートンのCEOを務めた時代もあり、自らも同社の大株主だった。つまり戦争で儲かる政治家の代表だ。

演じるのはクリスチャン・ベール。これが驚異的だ。まるで別人。徹底した役作りで知られるベールだが、本作ではチェイニーの20代から70代までを演じている。

副大統領に就任した2001年にアメリカ同時多発テロが発生する。ブッシュ米政権は、首謀者ウサマ・ビンラディン率いるテロ組織アルカイダをタリバン政権が保護していると主張してアフガニスタンへ侵攻し、さらにイラクのフセイン政権が大量破壊兵器を保有し、アルカイダとも関係していると断じて中国やロシア、フランスやドイツなど多くの国の反対を押し切って03年にイラク戦争を始める(アメリカを支持した数少ない国の1つが日本だ)。

しかし、フセイン政権崩壊後も大量破壊兵器は発見されなかった。大義なき戦争だ。

統治機構が崩壊したイラクの混乱からは、「イスラム国」(IS)へつながる過激派勢力が台頭した。アフガニスタン戦争も長期化しアメリカは21年、タリバンの復権を許したまま撤退することになる。

エンドクレジットの途中で……