ということで、高校側は独自の入試をやるし、その入試で合格点を取る方法は、学校では教えてもらえない、となるわけです。
そこで塾というものが社会的に不可欠になり、子どもを持つ親は「二重出費」を強いられます。いくら教育を無償化しても、最後にはこの塾の費用がバカにならず、親の家計を圧迫します。こうしてコスパ最悪の塾社会ができているわけです。
その結果として、少子化が加速することになるし、同時に塾などに費用がかけられる世帯だけが、偏差値の高い学校に子どもを送ることができるわけです。
それ以上に問題なのは、「時間のムダ」ということです。中学校では基礎しか学べない、受験勉強は塾でということになると、学校での教科の時間は意味がないことになります。
変化の激しい現代では、時間があれば英語やコンピューター、あるいは真の教養などをどんどん学んで経験することが求められています。にもかかわらず、学校と塾の両方に時間を割かなければならないというのは、コスパだけでなくタイパとしても最悪の制度だと言えます。
日本の数学教育に潜んでいる問題
OECD(経済協力開発機構)が行う国際学力到達度調査(PISA)では、日本の数学リテラシーは依然として極めて高い位置にあります。たとえば2022年の調査では、OECD加盟37カ国の中で1位(全体では81カ国・地域の中で5位)につけています。
一方で、アメリカの順位はOECD加盟国中28位(全体34位)でした。そんな中で、アメリカの大都市とその郊外では、ショッピングモールの一角に必ず「KUMON」の青いマークを見るようになっています。ほかでもない日本式の数学を中心とした塾であり、近年はインド式、シンガポール式などに押されているものの、全米で定着しています。
こうした事実からは、日本の数学教育がアメリカを引き離しつつ席巻しているように見えるのですが、実態はそれほど単純な話ではありません。
問題は、日本とアメリカの数学教育の「進度」における変化です。
1990年代までは、日本から親の転勤などでやって来てアメリカの学校に転入する子どもたちは、数学の進度で悩むことはまったくありませんでした。日本の子どもたちは、英語は初心者でも「数学ができるから」という理由で自信を持つことができ、それがアメリカの現地校に溶け込むのによい作用をしていたのでした。
事情が変わっていったのは2000年前後からです。アメリカの教育改革が進み、大学入試が過熱していく中で、高度な数学を履修することが受験におけるアピールとされたことが大きいのだと思います。