バクシによれば、最初の診察でおよそ2人に1人ががんを見落とされているのが実態だが、シー・ザ・サインズは、そうした「見当に頼る部分」をなくす。がんを示唆する典型的な「危険信号」が現れる前の段階で、患者のがんリスクを察知できるようになる。

また、がんの種類ごとに異なるモデルを採用しているため精度も高く、がん患者を特定する陰性的中率(がんではないと正しく判定する確率)は99%、腫瘍の発生源を予測する精度は94%を誇る。

ジョー・バイデン政権下で「がん撲滅タスクフォース」の執行責任者を務め、現在はシー・ザ・サインズの米国顧問であるグレゴリー・サイモンは、「がん治療の費用は、患者とアメリカの医療システムを破産に追い込んでいる」と指摘する。このツールは安価でスクリーニングのハードルを最大限に下げるため、コスト削減と多くの命を救うことにつながるという。

アメリカは複雑な医療保険システムを採用しているため、まずは初期採用者を探し、のちに公的医療保険の適用につなげたいとしている。

エモリー大学の専門家のアナント・マダブシも、「アメリカの初期診療体制は深刻なキャパシティ不足に直面している」と指摘。既存の電子健康記録から受動的かつ継続的にリスクをスクリーニングしてくれるツールは、専門医へのアクセスが限られている地域などで、大きな価値があると評価する。

実際、メイヨークリニックが3州100万人の患者記録を調査した研究では、このツールを使うことで、医師が実際に診断を下す1〜5年も前に、4人に1人の割合で患者を特定できることが実証された。ただしマダブシは、アメリカとイギリスでは人口統計や記録方法が異なるため、アメリカの多様な集団での検証や、通知後の明確な臨床ワークフローの構築が不可欠であると釘を刺す。

一方で、この技術のメリットに疑問を投げかける専門家もいる。ハーバード大学医学大学院のデビッド・ウォルト教授は、同様のAIシステムは他にも数多く存在すると指摘する。

「個人に対してがんのリスクを継続的に通知し続けることが最善の方法なのかは疑問だ」とウォルトは述べ、偽陽性が多くなる可能性に懸念を示した。「がんのリスクが高まったという通知を受け取った人は、さらなる検査を求めるようになり、不必要な精神的ストレスを抱え込むことになるだろう」
 

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