Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 15日 ロイター] - 米国とイランが和平の枠組みで合意した15日、日本政府内には安堵の声が広がった。ホルムズ海峡が開放される見通しとなり、原油調達の「正常化」への期待も高まっている。一方、合意を機に高市早苗首相が掲げる積極財政路線が再び強まれば、金利や為替に影響しかねないとの指摘もある。イランの核開発をめぐる合意の詳細は依然不透明で、内容次第では国際社会における米国のプレゼンスがより低下するとの懸念も出ている。

<現場の悲鳴、解消への期待>

「日本経済にとっては非常にうれしいニュースだ」。流通政策を担う政府関係者は合意の一報を受け、ロイターの取材にこう述べた。2月末の開戦以降、政府は石油および関連製品のナフサについて「必要量は確保されている」との立場を繰り返し表明してきた。一方、同関係者は「地方の企業を回ると、減産を余儀なくされるとの悲鳴が多く聞かれていた」とも明かす。

合意通りにホルムズ海峡が開放されることで石油やナフサ供給に見通しが立てば、「目詰まり」が解消に向かうだろう、と同関係者は期待を寄せた。「『量は足りている』という政府の発信と現場の実態とのギャップについて、現場企業から厳しい指摘もあった」とし、胸をなでおろした。

政府は3月以降、原油先物価格の上昇による物価高に対応するため、レギュラーガソリン価格が全国平均170円程度となるよう、石油元売りへの補助を実施してきた。財政政策に精通する別の関係者は、「合意を受けてガソリン補助は見直すことになるだろう」と説明。「財政政策が一定程度、正常化するはずだ」との見方を示した。

<財政拡張路線、再び強まるか>

ただ、「財政の正常化」はもろ刃の剣でもある。高市氏が掲げる「成長投資」や「危機管理投資」は大規模な財政出動を伴うものだが、米イランの衝突後は原油価格上昇の影響などを受けて長期金利が上昇。政府内には高市氏の「責任ある積極財政」を実行するための財源確保が難しくなったとの声も聞かれていた。

合意を受けて金利が落ち着けば、看板政策の実現を目指す高市氏にとっては追い風になる。前出の関係者は「停戦は世界にとってはもちろんグッドニュースだ」とした上で、消費減税や投資拡大など政権が注力する政策を例示。「高市氏が十分な財源を確保せずに政策を推し進めようとすれば、再びマーケットの動きに影響を与えることもあり得る」と述べた。

金融政策に精通する別の関係者は、和平合意を機に日銀が直ちに金融政策を変更することにはならないだろうと見つつ、「今後に向けたメッセージをどう発信するかは検討しなければならないだろう」と指摘。タカ派的な方針が修正される可能性があるとも語っている。

<米のプレゼンス、核合意次第で低下も>

一方、大きな懸念が残っていると、2人の関係者は指摘した。

首相官邸関係者は、イランの核開発をめぐる米イラン間の合意内容が不透明なことに触れ、「イランが核開発を断念したことをどう担保するかが重要だ」と指摘。イラン国内に残る濃縮ウランが、原発利用にとどまることを証明するのは「複雑な方程式だ」と述べた。

トランプ米大統領は1期目の2018年、イランとの包括的共同作業計画(核合意)から離脱した。別の政府関係者は「今回の核関連の合意が『核合意』以下の内容であれば、国際社会は米国が敗北したと見なすだろう」と指摘。「何のための戦争だったのか、との非難は避けられず、米国の国際社会でのプレゼンスがより低下する可能性がある」と危惧した。

高市氏は15日、自身のソーシャルメディア「X」に「今回の覚書の合意を、事態の収束に向けた大きな一歩として歓迎します」と投稿。「今後、今回の覚書が着実に実施され、ホルムズ海峡における自由で安全な航行が実際に確保されるとともに、イランの核問題等につき最終的な合意が一日も早く実現することを強く期待します」と記した。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。