Anirban Sen Nivedita Balu Saeed Azhar
[ニューヨーク 12日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業スペースXの歴史的なナスダック上場が円滑に進んだことを受け、米株式市場には安心感が広がった。今年後半に控えるオープンAIやアンソロピックの巨大新規株式公開(IPO)に備える取引業者や取引所にとって、今回のイベントは新たな「お手本」となる。
12日のスペースX上場規模は、米国の取引所におけるこれまでの最大案件と比べて3倍近く膨らんだため、2012年のフェイスブックの悲惨な株式市場デビューの記憶が残る市場関係者の間では、懸念の声も上がっていた。
しかしIPOの引き受け担当銀行や取引所、マーケットメーカー、清算機関、その他の市場インフラ企業の取引システムは、数百万件もの顧客注文を処理するという難題を見事に克服して見せた。
カナダの投資会社スタック・キャピタル・グループのジェフ・パークス最高経営責任者(CEO)は「人々はフェイスブックの頃を思い出して『この会社もあのような事態になるのではないか』と考えていた。だが米国の銀行は見事な仕事をしたし、スペースXのチームもロードショー(投資家説明会)で事業内容を伝える素晴らしい役割を果たしたと思う。見ての通り極めてスムーズに進んだ」と述べた。
スタックのポートフォリオの約3分の1はスペースX株が占めている。同社は2021年から投資を開始していた。
パークス氏が言及したのは、フェイスブックの不運なIPOを巡る混乱だ。当時は技術的な問題により、歴史的な上場がウォール街で最も悪名高い取引上の大失態の1つへと変貌し、投資家やブローカーは何時間も放置され、最終的にマーケットメーカーには数億ドルの損失をもたらした。
米国最大の個人投資家向けマーケットメーカー、シタデル・セキュリティーズによると、スペースXはIPOでの個人投資家の注文活動として過去最高を記録した。同社の広報担当者は、スペースX株の個人注文の大半を自社で処理したと述べた。
こうした華々しい市場デビューで「スタビライゼーション・エージェント(価格安定操作主幹事)」を務めたモルガン・スタンレーは、スペースX株の取引開始を管理する重要な役割を担ったと言える。同行は、前例のない投資家需要に対処しながらも、秩序ある展開を確実にする必要があった。安定操作主幹事は通常、公開市場で株式を買い支え、上場初日に急落する銘柄を下支えする役割を果たす。
スペースXに助言を行っている主幹事証券会社の1社は、今回のIPOが取引所や銀行にとって記念碑的な出来事であり、成功させることが極めて重要だったと明かした。
取引プラットフォームのチャールズ・シュワブの広報担当者の話では、スペースX株の取引開始から数時間で100万件を大幅に超える注文を確認しており、これは過去のIPOと比較しても際立った数字だという。
ホライゾン・インベストメンツの調査・クオンツ戦略責任者を務めるマイク・ディクソン氏は「スペースX株は一気に急騰しているわけではないが、じわじわと値を上げている。その要因の多くは、多くの人が予想していたよりも、初値が落ち着いた地味なものになったことにある。募集倍率の高さが話題になっていた割に、ボラティリティーがそれほど高くないことには少し驚いている」と述べた。
<申し分のない結果>
巨大IPO銘柄の上場は、取引所が初値を決定する前に膨大な売買注文を照合しなければならないため、遅延が発生することが多い。スペースX株の場合、取引は12日の正午少し前に開始された。これは上場初日の午後に取引が始まった最近のセレブラス・システムズやクアンティニュアムと比較すると、かなり早い開始だった。
12日はネット証券のロビンフッドで取引初期に一部の問題が見られたものの、市場全体としては12年にフェイスブック株の取引を妨げたような技術的な不具合を概ね回避し、ナスダックやマーケットメーカー、投資家はほっと胸をなで下ろした。
ナスダックのアデナ・フリードマンCEOは12日のCNBCのインタビューで「われわれは皆、非常によく協力し合った。銀行パートナーとも多くの準備を重ねた。準備の過程を通じて、全ての企業と対話を絶やさないように努めた結果、本当に申し分のない結果になった」と語った。