Amanda Stephenson
[カルガリー 9日 ロイター] - カナダ西部のアルバータ州は、人工知能(AI)ブームに乗じたハイテク企業のデータセンター建設を誘致するため、地元で安価な化石燃料を豊富に供給できる利点を売り込んでいる。だが、この動きはデータセンターの新規開発と、水力発電や再生可能エネルギー、原子力発電といったクリーンエネルギーの拡大を結びつけるというカナダ連邦政府の方針との間で齟齬(そご)が生じている。
カナダの天然ガス生産量は世界5位で、うち約6割をアルバータ州産が占める。同州は膨大な化石燃料を埋蔵しているのに加え、データセンターを冷却するためのコストを抑えられる冷涼な気候と、利用可能な土地を豊富に抱えている。これらの要素が相まって、地域社会や議員からの反発に直面している米国よりもデータセンターの運営コストを抑えられる可能性がある。
一方、カナダのカーニー首相は、カナダのデータセンターを「世界でも最もクリーンな電力の一部」で稼働すると訴えている。AIの導入加速を目指した今月4日発表のAI戦略では、カナダの電力網の83%超が再生可能エネルギーや、温室効果ガス排出量を低減できる電源に由来することが強調された。
カナダには、少なくとも50メガワットの電力容量を必要とする通称ハイパースケールのデータセンターがわずか5カ所しかない。
一方、計画中なのは100カ所近くに達し、うち9割はアルバータ州に建設予定だ。ヨーク大の調査によると、同州の電力網からの温室効果ガス排出量は全国平均の約5倍に上る。
アルバータ州のグルビシュ技術相は「私たちは本質的に、これらのデータセンターをデジタルパイプラインや、デジタル製油所と見なしている。これにより、天然ガスの価値を世界市場へ届ける手助けができるが、それは創造的で現代的な方法によるものだ」と、インタビューで語った。
同州は、データセンターへの投資額として1000億カナダドルの誘致を目指している。グルビシュ氏はエネルギーを大量に消費するテック大手企業に対し、アルバータ州の天然ガスを売り込むため、2024年以降に米西部カリフォルニア州のハイテク企業が集積するシリコンバレーに何度も足を運んでいると明らかにした。
アルバータ州にある20カ所の中小規模のデータセンターは同州の電力網から供給を受けており、その電力網の6割は天然ガスで賄われている。アルバータ州政府は、新規事業者が電力供給能力の制限を回避できるように独自の電源を建設する選択肢を用意している。
環境保護団体「カナダ環境医師協会」(CAPE)のメンバーである医師のジュリア・サワツキー氏は、カナダが掲げる環境目標と現実との間の隔たりがますます広がっているとして「カナダがグリーン経済を実現したり、気候目標を達成したりできるという考えやビジョンはあるようだ」と前置きしつつ、「しかしながら、AIデータ戦略が実際にどのように展開されるかには私たち全員が真剣に注視すべきだと思う」と指摘した。
カナダ政府のイノベーション・科学・経済開発省の報道担当者は、カナダはデータセンターの新規開発をクリーンエネルギーの拡大と厳格な環境基準、および地域社会への利益と整合させていくとコメントした。
アルバータ州政府の報道担当者はコメント要請に応じなかった。