Danielle Kaye
[ニューヨーク 11日 ロイター] - サッカーのワールドカップ(W杯)開幕に当たり、スポーツ用品大手のナイキとアディダスがピッチ内外で激しい競争を繰り広げている。
ナイキにとっては負けられない闘いだ。W杯は同社のお膝元である米国などで開催される。エリオット・ヒル最高経営責任者(CEO)が推進するナイキ経営再建の取り組みは、着手から2年が経過したところだ。ナイキの市場シェアは侵食され、本四半期の売上高は2―4%減少する見通しで、投資家は経営再建の歩みにしびれを切らし、株価は年初から30%以上も下落している。
ただ、小売りの現場には明るい兆しも見えている。今週、ニューヨークのタイムズスクエアにあるサッカー用品店「ペレ・サッカー」を訪れた買い物客を出迎えたのは、ナイキが手がける米国、ブラジル、フランスのユニフォームを身にまとったマネキンの列だった。
サッカー界のアイコン、エムバペや米セレブ、キム・カーダシアンを起用したナイキのW杯キャンペーン映像「Rip the Script(筋書きを破り捨てろ)」は、マンハッタン・ミッドタウンにあるスポーツ用品チェーン店「チャンプス・スポーツ」のウィンドウディスプレイを埋め尽くした。この店がナイキのユニフォームを目立つ場所に配置したことは、ナイキと小売業者の関係修復が進んでいる証しだ。ナイキのジョン・ドナホー前CEOが推進した「消費者直接取引」モデルへの移行により、こうした関係の多くは断ち切られていた。
ナイキのグローバル・フットボール担当バイスプレジデント、カミロ・アンドラデ氏は「サッカーによって、当社は実に多様な人々にアプローチできている」と語り、小売業者との関係修復を最優先に進めてきたと説明した。
ナイキは今月、サッカースパイク「マーキュリアル」2種を新発売したのに加え、12カ国の代表チームにユニフォームを提供し、現地のストリートウエア・デザイナーと提携し、世界5000カ所以上の直営店や卸売店でサッカー関連商品の刷新を行っている。
しかし競争は苛烈だ。W杯の公式スポンサーであり、長年サッカーと深く結びついてきたアディダスは、14チームのスポンサーを務め、小売店舗の真ん中で視線を集める公式試合球を提供している。
英小売り企業JDスポーツの広報担当者によると、これまでのところ、代表チーム関連商品の中で最も売れているのはアディダスが提供するメキシコとアルゼンチンのユニフォームだ。アナリストによると、ブランドの勝敗はどのチームが勝ち進むかによっても左右されるとみられる。
ルイス・カリーヨさん(30)はペレ・サッカーの店舗で、メキシコ代表のユニフォームが並ぶラックに引き寄せられていた。開幕戦で南アフリカと対決する母国チームの応援だけが目的ではない。肩にあしらわれたアディダスの象徴、スリーストライプス(3本線)に魅力を感じたという。
カリーヨさんはもっと若いころ、ナイキのスパイク「マーキュリアル」を買っていたが、今ではデザインに対するワクワク感が薄れ「もう以前とは違う気がする」と語った。
<挽回なるか>
アナリストらは、W杯による追い風を持ってしてもナイキが下降基調を覆すには不十分かもしれないとくぎを刺す。消費者の心に刺さるような、斬新な商品群を出していく必要があるという。
RBCキャピタル・マーケッツはW杯開幕戦の1日前、ナイキの投資判断を引き下げた。アナリストのピラル・ダダニア氏は、経営再建のペースが予想より遅いと指摘。W杯という起爆剤や新商品だけでは、他の事業部門で行われている再建措置の影響を補うには不十分だと語った。
モーニングスターのアナリスト、デビッド・スウォーツ氏は「ナイキが抱える問題は、ワールドカップ効果だけで消えるわけではない」とした上で、「ただ、ナイキ・ブランドを再びアピールする好機なのは間違いない」と話した。
テルシー・アドバイザリー・グループのアナリストチームは今週のリポートで、大会が進むにつれてナイキの商品ラインナップが同社の勢いを後押しすると予想。ただ現時点では、有名スポーツ店においてアディダスの商品のほうが目立っているようだと分析した。