いろいろ聞こうとすると「もう、今じゃなくてもいいでしょ」とか「縁起でもないこと言わないで」と拒否されることがあります。その時は「ごめんね。そうだよね」と、いちど引いてください。話題を出すだけで十分意味があります。縁起でもないことが自分事なんだと感じてもらうだけで十分なんです。

そしてわたしはよく患者さんのご家族に言いますが、介護の目的は「愛が憎しみに変わらないようにすること」です。

いつもと違う無理をし続けたり、「はあ、これ、いつまで続くんだろう」と思ったりすると、いつしか大切な人の最期を待ってしまうようになる。待ってしまうほうが自分の気持ちをつらくするんですよ。そうならないように、いつもと違う無理をしないことが大事なんです。

偉そうに話していますが、わたしもまだ、関係性の悪い父の看取りについて悩んでいる最中です。縁があって親となった人を、願わくば、穏やかに見送ることができるよう、本書が皆様のお役に立てたら幸いです。

生きたように死んでいく、自分たちなりの正解を胸に

尾崎: 母の癌がステージ4で見つかって亡くなるまで、9ヶ月ほどでしたが、いま振り返っても、怒涛の数ヶ月だったなと思います。わがままな母に振り回されている間も、待ったなしで病が進んでいくので、心が追いつかないこともありました。だけど、そういうものでしょう。

誰しも家族の死を経験することになりますが、このことについて、誰もが不慣れで、経験不足です。振り回されて、心が追いつかなくても当然。だからこそ、自分たちなりの正解を見つけられたらいいのだと思います。

母が亡くなった後に痛感したのは、生きたように死んでいく、といいますが、そのとおりだなということでした。困ったちゃんの母は、最後まで困ったちゃんの自分を貫きました。逆にいえば、姉の容子を司令塔にして、わたしたち姉妹と父はタッグを組んで、母の望むように見送ってあげられたんじゃないかと思っています。

親の看取りは誰しも未経験
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