[エルサレム 8日 ロイター] - イスラエルが8日に行ったイランへの空爆は、4月に成立した停戦後初めての攻撃だった。トランプ米大統領から攻撃中止を求められていたイスラエルが強硬姿勢を鮮明にし、トランプ氏の顔に泥を塗ったと言える。背景にはトランプ氏がイランとの和平交渉の場でイスラエルとの距離を置く中で、イスラエル側が発言権を主張したという構図が見えてくる。
イスラエルがレバノンの首都ベイルートを攻撃したのを受け、イランがイスラエルにミサイルを発射。イラン空爆はその報復攻撃となった。イスラエルのヘブライ大で軍事史を研究するダニー・オルバフ氏は、今回のイラン空爆は「イスラエルの国益が無視されれば、イランとの最終合意は成立しない」とのメッセージだとした上で「なぜならもしもイスラエルの国益が過度に踏みにじられるようなことがあれば、イスラエルは交渉のテーブルをひっくり返すことができるからだ」と解説した。
<交渉からイスラエル排除>
2月にイスラエルとともにイランを攻撃したトランプ氏は、イスラエルを交渉から排除してイランとの和平交渉による解決を目指してきた。
トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相に対し、交渉を台無しにするような行動を控えるよう公に促してきた。これにはイランと結託するレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラを標的にした、イスラエルのレバノン攻撃の停止も含まれる。
イランはレバノンでの停戦が維持されない限り、米国とのいかなる和平合意にも同意しないと表明している。
ネタニヤフ氏は先週のトランプ氏との電話会談後、ベイルートへの空爆を中止。トランプ氏はその後、ネタニヤフ氏と激しい口論を繰り広げてネタニヤフ氏のことを「完全にいかれた奴」と呼んだことを認めたが、それでも両者の関係は良好だと主張している。
イスラエルの反ネタニヤフ派は、蚊帳の外に置かれた米国とイランの和平交渉のために軍事行動を制限し、事実上主権を放棄したと非難していた。
イスラエルが今月7日にレバノンを攻撃し、イランがイスラエルへの報復攻撃に踏み切った後、トランプ氏は米ニュースサイトのアクシオスに対して「双方とも思い通りになった。イスラエルが攻撃し、イランも攻撃した。これ以上は必要ない」として一段落したとの見解を示した。
ところがイスラエルはイラン空爆を通じ、イスラエルによるレバノン攻撃に対してイランに口出しをさせないとの姿勢を改めてにじませた。
イスラエルの国防当局高官はロイターに対し、イスラエルのレバノン攻撃に対するイランのイスラエル攻撃が、正当な「報復」だと見なされるようなシナリオは受け入れられないと明言した。
イラン攻撃の決定前にネタニヤフ氏は安全保障トップと国防当局者らを集め、短期的な情勢緊迫で目指す目標について協議する会合を開催した。国防当局高官と、協議の内容に詳しい2人の当局者が明らかにした。
国防当局の高官の1人は、目標の一つは米国とイランが和平合意を結ぶことを視野に入れ、イスラエルがレバノン南部のヒズボラを攻撃することで、現地に部隊を駐留させ続ける権利が奪われないことを明確にすることだったと解説した。その上で、ネタニヤフ氏は先週末のトランプ氏との電話会談でこの考えを伝えていたと明らかにした。
<イスラエル単独のイラン長期空爆は不可能>
イスラエルとイランの間で戦闘が一時再開されたことや、ネタニヤフ氏がトランプ氏の停戦要求を無視したことで、これらの保守派指導者の間に時折生じてきた緊張関係が再燃した。
ネタニヤフ氏は非公式の場で、イランに対するトランプ氏の考え方に影響を与えるのが難しいことを認めていた。トランプ氏の意思決定をこちら側に誘導する「余地がない」と側近たちに語っている。
しかし軍事専門家の見立てでは、米国の支援を受けずにイスラエルがイランを攻撃できる能力はあるものの、そのような空爆作戦を数週間以上にわたって続けるにはあくまで米国の承認と支援が必要だという。
イスラエルの国家安全保障研究所のイエホシュア・カリスキー上級研究員は「弾薬は消耗品であるため、イスラエルがこの戦争を長期間にわたり単独で続けることは不可能だ」と語った。