マスク氏介入「警察は殺人犯に卑屈に媚びへつらった」
警察が「人種差別主義者」と非難されることを恐れるあまり、少数派の主張を鵜呑みにし、多数派である白人市民の安全や人権を軽視していると極右・強硬右派は主張している。サウサンプトンでは「白人が逆差別を受けている」と激しい抗議活動や暴動へと発展した。
英国の法律では公の場での刃物所持は原則禁止されているが、シーク教徒の宗教的な儀礼用短剣(キルパン)など宗教的理由による例外が認められている。しかし殺人の凶器に使用されたことで宗教的寛容を理由に刃物所持を例外的に認めてきた現行制度の前提が揺らいでいる。
スペースXの上場を控える世界一の大富豪イーロン・マスク氏は自身が保有するXで「警察が殺人犯に卑屈に媚びへつらい、瀕死のノワクさんをいかに無残に扱ったかを示す動画を知人全員に拡散せよ」と呼びかけ、主要メディアがこの事件について沈黙していると批判した。
「コミュニティーを引き裂くことを望んでいない」
マスク氏は常々「Woke思想(行き過ぎたポリティカル・コレクトネス)」や既存メディアの偏向性を敵視し、告発してきた。西欧諸国のリベラルな政策が文明的衰退を招いているという極端な持論を拡散するため、この事件を利用して煽っている側面が強い。
米国務省もXで「イデオロギー的な条件付けと二重基準の警察活動は文明的衰退の明白な兆候だ。これらは西側諸国全体で拒絶されなければならない」との声明を発表した。米政府が同盟国の警察活動に対して非難を浴びせるのは極めて異例だ。
これに対しキア・スターマー英首相はマスク氏の一連の投稿を「英国政治への介入で、分断を煽る試みだ」と非難した。ノワクさんの遺族は6月4日、首相官邸でスターマー氏と面会、「ヘンリーの死による怒りがコミュニティーをバラバラに引き裂くことを望んでいない」と訴えた。
ノワクさんの事件が英国政治、引いては米欧の政治状況にどのような影響を与えるのか、予断を許さない。