リバプールにある「キャバーン・クラブ」がビートルズ伝説「始まりの地」なら、こちらはその「終焉の地」と呼べばいいか。そう、あの4人組が寒空の下で最後のライブをやってのけた「サビル・ロウ3番地」ビルの屋上だ。

5月11日、ビートルズのマネジメント会社アップル・コアは、ロンドン中心部にあるサビル・ロウ3番地の7階建てビルの再取得を発表した。来年にはミュージアムとして公開するという。

時は1969年の1月。ジョンとポールとジョージとリンゴの4人が一緒に演奏した最後のステージの映像と音は、翌70年に『レット・イット・ビー』と題する映画とアルバムの形で発表された。

彼らは68年6月に、サビル・ロウ3番地のビルをわずか50万ポンドで買い取り、そこをビートルズの活動の総本山に仕立てた。地下にはレコーディングスタジオがあり、メンバー4人それぞれのオフィスもあり、屋上には即席のライブスペースがあった。

ジョージ・ハリスンの「アップル・スクラフス」(70年)の歌詞にもあるように、熱烈なファンたちはここの正面玄関に集まり、お気に入りのメンバーを一目でも見よう、一言でも声をかけようと根気よく待っていた。しかし、その敷居をまたぐチャンスはほとんどなかった。

このミュージアム(2027年開館予定)では、膨大なアーカイブから厳選された未公開資料を展示するほか、企画展、公式グッズの店、そして『レット・イット・ビー』が録音された当時のスタジオの再現も予定されている。

また、ファンはバンドの足跡をたどり、あの伝説的なコンサートが披露された屋上に出て、その瞬間を追体験することができる。つまり、この施設ではビートルズ関連の展示だけでなく、新しい体験を楽しむこともできる。

リバプールには今も世界中のビートルズファンがやって来て、伝説の「始まりの地」の空気を吸っている。当時の彼らの暮らしの驚くべき「普通さ」は、本や映画では伝わらず、その場に立ってこそ実感できるからだ。

リバプールの南部で質素な生活を送っていた4人の若者が、20世紀で最も成功したグループになったことがいかに信じ難いことかを、あそこへ行けば自分の目と肌で確かめられる。

フォースリン・ロードにあるマッカートニー家の居間やストロベリー・フィールドの門前、ペニー・レインのロータリーの真ん中に立ったりするのと同じように、サビル・ロウ3番地の屋上に立ってロンドンのスカイラインを見渡し、ジョンとポール、ジョージとリンゴが実際に立っていた場所に足を置けば、ビートルズファンなら言葉にならないほどの感動を覚えるはずだ。想像を現実に、現実をさらなる想像へとかき立てる体験だ。

サビル・ロウ3番地の再取得はアップル・コアによる見事な一手だ。この記念館は生身のビートルズが生きた1960年代の世界と、SNSや大スクリーンで見るビートルズの世界を結び付ける。

屋上ライブ最後の曲は「ゲット・バック」だった。ファンがここに戻ってくる日を、きっと信じていたのだろう。

Holly Tessler, Senior Lecturer, Music Industries; Programme Leader, MA Beatles, Heritage and Culture,University of Liverpool

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【動画】サビル・ロウのビル屋上、ジョンとポールとジョージとリンゴの4人が一緒に演奏した最後のステージ(1969年)
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