同じように、猛暑の時期に、ある特定の種類のコンビニアイスが爆発的なヒットをしたとしても、各社ともに増産に踏み切るケースは少なくなっています。増産よりは品切れを選択するのです。どうしてかというと、将来の人口減を前提にすると生産設備の増設は難しいからです。

つまり、人口減が確定している市場では、需要と供給にアンバランスが起きがちであり、そこに転売ヤーの付け込むスキがあるのです。

2つ目は、購買力の問題です。例えば、Switch2などの電子製品の場合に、日本の消費者に供給するというのは、日本発のメーカーにとって非常に大切です。なぜならば、日本の消費者は非常にレベルが高く、目が肥えており、そのニーズを満たすことが製品の質の維持につながるからです。

ところが、その日本の市場では購買力が低迷しています。そうすると、目の肥えた日本の消費者に商品を行き渡らせるには国際市場よりも価格を抑える必要が出てきます。その結果、本来であればもっと高額で取引されて良い製品が、国内では特別に価格を抑制して販売されます。その差の部分には、やはり転売ヤーの付け込む余地が出来てしまうのです。

3つ目は、これはアイドルグループのライブなどがそうですが、タレントイメージを守るためには、プレミアム価格にできないという構造があります。アイドルグループの場合は、ビジネスモデルの両輪はライブとCM出演です。CM出演の場合は、幅広い市場をもった大衆商品のブランド力を高めるような活動になります。

需要と供給のバランスで価格が決まるとは限らない

仮に、そのライブがダイナミック・プライシングなどのシステムによって、プレミアムな価格になってしまうと、グループのタレントイメージは変化してしまいます。ですから、広い市場にリーチできる大衆的なイメージを維持するには、ライブの価格も誰にでも手の届くレベルに抑えなくてはなりません。ライブの場合は、転売対策が進んでいますが、反対に厳しい転売制限をしないと実勢価格が高騰してしまうという構造を常に抱えているわけです。その背景には、タレントイメージを守るためには、プレミアムな価格は困るという問題があるわけです。

これとは別に、日本の場合はベニュー(会場)に大きな制約があります。大規模なアリーナは数に限りがあるし、警備体制や交通機関の輸送体制にも制約があるからです。つまり、需要があって、タレントのスケジュールが組める場合でも、簡単に興行を増やすことはできないという事情があるのです。そうした問題も含めて、アイドルグループのライブチケットに関しては、自由経済では説明できない要素が大きいとも言えます。

以上の3点は、それぞれに異なる理由ではありますが、いずれも日本市場では無視できない事情です。大量生産品も、趣味の製品も、ライブのチケットも、それぞれに自由な需要と供給の価格メカニズムに任せることの出来ない深い事情を抱えているのです。

残念ながら、そこに転売ヤーの暗躍する素地があるのは否定できません。そんな中で、仮に転売を許して、自由な価格形成を放置してしまうと、スーパーで買う袋菓子は品薄になり、趣味の製品は目の肥えた消費者から切り離され、メインストリームの存在だったアイドルグループというビジネスモデルは衰退してしまうでしょう。

おそらくこうした現象は、従来の経済学の理論では説明が難しいのかもしれません。需要と供給のバランスで価格が形成されるとは限らないからです。そう考えると、21世紀前半の日本のケースについて「転売の経済学」というのを再構築する必要がありそうです。

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