ヘルスリテラシーの不足が医療費を増大させる一因に

逆に、ヘルスリテラシーの高い人は的確な情報を取り入れ、それを日々の健康管理につなげる好循環を生み出しやすい。日本人の教員約7000人を対象にした研究では、同じ保健指導プログラムを受けた人のうち、自身の健康診断の結果への理解度が高かった人ほどプログラムを途中離脱する割合が低く、1年後の検査値も有意に改善していた。

影響は個人の体調にとどまらない。ヘルスリテラシーの不足によって生じる医療費の増加は全体の3~5%に達すると推計され、医療費を膨張させ、医療システムの効率を低下させる一因にもなっている。

だが残念ながら、現実には現代人のヘルスリテラシーは十分な水準に達しているとは言い難い。19~21年に欧州17カ国で約4万人を対象に実施された調査では、国によって差はあるものの、ヘルスリテラシーが「不十分」または「問題あり」とされた人が25〜75%に上った。

独ミュンヘン工科大学が24年に約2000人のドイツ人を対象に行った調査でも、ヘルスリテラシーに課題を抱える人が10年前より20ポイント以上増の75・8%に達した。しかも、従来は教育水準や所得が高いほどヘルスリテラシーも高いとされてきたが、今回はそうした差がほとんど見られず、ネット上の情報過多やSNSの影響で幅広い層のヘルスリテラシーが低下していると指摘された。

「この結果は警鐘だ」と、調査に協力した公衆衛生の専門家で、独大手医療出版社ヴォルト&ビルト・フェアラークの最高科学責任者のカイ・コルパツィクは語る。

「自動チャットボットが特定の層を狙って誤情報を流し、フェイクニュースが社会的に容認されている。そんな時代にインフォデミックに立ち向かうには、信頼できる情報と、それを支えるインフラが不可欠だ」

日本のヘルスリテラシーの水準が他国より低い原因
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