2026年5月、東京・大手町の一室は、世界の潮流を見据える「フォーサイト(予測・展望)」をめぐる重要な対話の象徴的な舞台となった。

世界的な未来研究シンクタンク「ミレニアム・プロジェクト」の共同創設者であり未来研究の最も精力的な設計者の一人、ジェリーこと、ジェローム・グレン(Jerome Clayton Glenn)氏が来日。混迷を深める世界、社会情勢の未来について展望を描くため、国連大学(UNU)や世界銀行と深い繋がりを持つ独立コンサルタント、小林隼人氏のホストにより、企業や中央省庁、一橋大学や新潟大学などのキーパーソンを含む、国内の未来学の専門家や実践者、アカデミア、企業人、政策立案者、シナリオ・プランナーたちが一堂に会した。

この集会は、単なる懇親の場を超え、日本国内におけるフォーサイトや未来学(Futures Studies)を再活性化させ、組織化するための戦略的な作戦会議の場となった。

ミレニアム・プロジェクトを主導するJerome Glenn氏
ミレニアム・プロジェクトを主導するJerome Glenn氏

真のグローバル・シンクタンクという哲学と「シナリオ」の真実

ディスカッションの中でグレン氏が最も熱弁を振るったのは、冷戦末期の1988年に始動したミレニアム・プロジェクトの根本的な設計思想についてであった。それは、形骸化した既存の「グローバル・シンクタンク」が目指したものではない。同氏らが構築したのは、政府、大学、企業、NGOの専門家が「ファーストネーム(個人の信頼関係)」で直接つながり、知恵を出し合う、地球規模の分散型ネットワーク(ノード)であった。

グレン氏はまた、「ミレニアム・プロジェクト」共同創設者の故テッド・ゴードン氏の遺志を継ぐ者として、安易な未来予測の手法を批判した。ゴードン氏は、専門家らへの調査と回答のフィードバックを繰り返しながら意見を集約する「デルファイ法」や、未来予測の要素的な複数のトレンドが相互に与える影響や確率の変化の分析・評価手法「クロスインパクト分析」に通じた先駆者として世界的に知られていた。

「私がシナリオと言うとき、それは未来の描写を4つの小さなマトリクスの箱に分類しただけのようなものを指すのではない。現在から未来へとつながる因果関係、妥当なリンク、そして意思決定のプロセスを描いた『物語(ストーリー)』のことだ」

地球規模の地平を描く『State of the Future 20.0』とAIの進化
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