「監禁でしょ。訴えますよ」が鉄板フレーズ

 「私は“神”から選ばれた特別な存在なので“悪い波動”を感じれるんです。母は凡人だから、私の行ないの重要性がわからない。母も父も不吉な波動が出ているから除霊が必要です」

 彼女の眼は真剣で、その口調は疑いを挟む余地を与えない。

「西田さんには悪い霊や波動が実際に見えるんですか?」

「感じるんです。あなたにも悪い霊がついているのがわかりますよ。除霊が必要です。刃物で波動のつながりを断ち切らないといけませんから、あなたからも包丁を隠さないように母に言ってください」

 母親があわてて話に割り込む。

「この子は除霊と言って、包丁やハサミを私たちの顔の前で振り回すんです。怖くて怖くて」

「刃物がないと除霊ができないでしょ」

 母親がまた彼女の発言を諌めようとするが、西田さんは突然席を立ち、両手で“見えない刀”を構え、母親の頭上でシャッシャッとお祓いの動作を始めた。(19〜20ページより)

「神と交信中なので静かにしてください」と横槍を許さない西田さんは統合失調症の可能性があると判断し、著者は入院治療を母親に提案する。本人からは「病気じゃないのに入院なんて監禁でしょ。犯罪で訴えますよ」と言われるが、「訴えますよ」もこの病気の鉄板フレーズなのだという。

かくして「恨むわよ!」と絶叫する西田さんは看護師に両脇を抱えられ、閉鎖病棟の中の保護室に連れて行かれる。トイレと布団しかない殺風景な部屋で、隣室には同じように精神状態が不安定な患者が入室しており、四六時中、叫び声やうめき声が絶えない環境だ。

 「体調はいかがですか?」

「こんなところに私を監禁してよく平気な顔でいられますね。私をここから出さないと悪霊が広がってしまいます。すぐ家に帰らせてください」

「そうやって一日中お祓いばかりに気を取られる生活は疲れないですか?」

「疲れるわけありません。これが私の仕事なんだから」(25ページより)

無表情で尿や便も垂れ流しだったのに、3カ月後
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