無表情で尿や便も垂れ流しだったのに、3カ月後
話しかけても終始無言で無表情、食事もせず尿や便も垂れ流しの“緊張病性昏迷”となったりもしたが、治療を続け、入院から1カ月が経つ頃には抗精神病薬を服用するようになり、次第に穏やかになっていく。
保護室から閉鎖病棟内の個室での生活へと移ってからは、「最近、お祓いしなくなりましたね」と水を向けてみても「なんであんなことをやっていたんだろうって、自分が自分じゃなかったような気持ちです」と当時の心模様を伝えるようになった。
入院から3カ月、西田さんの退院の日が来た。
「もう頭の中で聞こえていた声が消えました。霊の気配も感じません。除霊師は引退ですね」
自分を客観視し、そんな冗談まで飛ばす。(30ページより)
退院後も通院を継続し、病状の再燃もなく、両親との関係も元に戻ったそうだ。つまり成功例であるが、当然ながら、そうはいかない話もある。
例えば、自閉症スペクトラム症(ASD)があるという20代前半の娘(久美さん=仮名)を「グループホームに入れてください」と、紹介状を片手に連れてきた50代の母親だ。本人ではなく、母親に問題があった。
久美さん自体はASDの症状があるものの、普段は穏やかで、興奮して暴言や暴力が出ることもなく、母親に対しても従順な様子。通っている作業所でも淡々と業務をし、利用者同士のトラブルもないという。
だが、この母親は訪れた時点で、すでに10軒近いクリニックを転々と受診し続けていた。どの紹介状にも「病状は比較的安定している」との意見が並んでいるにもかかわらず、だ。
ちなみに紹介状には「母親は本人の援助についてたいへん熱心です」「お母さまの強いご要望により」というワードが目立ったというが、「熱心な家族」「強いご要望」は医師仲間だけに伝わる隠語で「面倒くさく厄介」「自己主張が強く扱いづらい」という意味なのだそうだ。