日本政府は現在、戦後最大級のインテリジェンス制度改革に踏み出している。2026年3月に国会に提出された関連法案は、4月に衆議院を通過した。
続く「第2段階」では、実質的な反スパイ刑事罰、仮装身分の使用権限、国家情報戦略、対外情報機関、人材育成機関の創設、そして米国の外国代理人登録法(FARA)に相当する外国代理人・外国影響力登録制度が議論される見通しだ。
その時期は当初想定された2026年秋の臨時国会から、2027年の通常国会以降へ後ろ倒しされた。スパイ対策として、米国のFARAの導入を検討すべきだとの声が出ている。
本家の米国では最近、FARAの運用実態を物語る2つの象徴的な事件が起きた。そこで今回は、米国の実例から、FARAをめぐる現実を考察したい。
2026年5月11日、ロサンゼルスの連邦検察は、カリフォルニア州アルカディア市の当時市長だったアイリーン・ワンの起訴状を公開した。容疑は、合衆国法典第18編第951条に基づく「未登録の中国政府代理人としての活動」だ。
第951条は、FARAと並ぶ刑事罰規定で、司法長官に事前通知せず外国政府の代理人として米国内で活動することを禁じている。起訴状は4月1日に非公開で提出されており、ワンはすでに罪を認めることで合意している。
司法取引合意書によれば、ワンは2022年の市議選当選・市長就任に先立つ2020年後半から2022年にかけ、元婚約者のマイク・サン(同種の罪で禁錮4年服役中)とウェブサイト「U.S. News Center」を運営していた。このサイトは、中国政府当局者の指示を受け、新疆ウイグル自治区での人権侵害を否定する論説などを掲載し、閲覧数を中国側に報告していたとされる。
ワンが接触していた重要人物の一人、ジョン・チェンは、中国共産党高官級の行事に出席し、習近平国家主席と面会したこともある。チェン自身も未登録代理人として活動した罪で、2024年11月に禁錮20カ月の判決を受けている。