長年にわたり機能不全の法律だったFARA
一方、第951条はより刑事色が強い。外国政府の代理人として米国内で活動しながら、司法長官に通知しなかった者を対象とする。FARAよりも伝統的なスパイ活動に近い枠組みであり、ワン事件はこちらに該当する。
テリー事件はFARAに基づく。いずれも外国側の指示を受けた行為が焦点だが、第951条では特に「外国政府」との代理関係の立証が必要になる。
長年、FARAは機能不全の法律だった。司法省監察官の2016年報告書によれば、1966〜2015年のFARA刑事事件はわずか7件で、登録件数も減少している。ワシントンの実務家の間では、FARAは国家安全保障法というより、周縁的なコンプライアンス法と見なされていた。
潮目が変わったのは2016年以降だ。ロシア政府の代理人と指摘されたポール・マナフォート(トランプ陣営の元選対本部長)、グレッグ・クレイグ(オバマ政権でホワイトハウス法律顧問を務めた著名弁護士で親ロシアのウクライナ政治家の代理人だった)事件などを機にFARAは再び注目を集めるようになった。2024〜2026年には、対象は伝統的なロビー活動を超え、元政府高官、州政府関係者、芸能人、地方政治家、シンクタンク関係者にまで広がった。
ニューヨークのリンダ・サン(中国政府のために秘密裏に働いていたとされる元ニューヨーク州政府職員)事件、1MDBスキャンダルに関連したプラス・ミッシェル事件(人気ヒップホップグループ「フージーズ(The Fugees)」のメンバーであるプラス・ミッシェルが、マレーシアの政府系ファンド「1MDB」から盗まれた巨額の資金を使い、アメリカで違法なロビー活動や選挙献金を行ったとされる事件)、そしてワン事件は、その延長線上にある。
ただし、米国の法執行方針は一貫していない。2025年2月、パム・ボンディ司法長官(当時)は、刑事罰を伴うFARAや第951条の執行を「外国政府による、より伝統的なスパイ活動に類似した行為」に絞る方針を示した。