保健専門家は、クルーズ船での集団感染について、乗客の1人が乗船前にアンデス株に感染していたことが発端だとみている。その後、クルーズ船という限られた環境の中でウイルスが広がり、乗客同士の濃厚接触によって、限定的ながらも、ヒトからヒトへの感染が起きた可能性がある。

対して、コロラド州の死亡例を含む大半のハンタウイルス症例は、感染したげっ歯類のいる環境にさらされることで発生しており、ヒトからの感染ではない。

ハンタウイルス感染症は重症化しやすく、死に至ることもある。米国では、ハンタウイルス肺症候群の致死率は高く、一部の試算では特定のウイルス株において約40%の症例が致命的になる可能性があるとされている。コロラド州では、1993〜2023年までに121人の感染者が報告され、計76人が死亡した。

コロラド州の保健当局は引き続き感染源の調査を進めており、クルーズ船の乗客や接触者の監視も続けられている。

専門家は、広範囲にわたる感染拡大のリスクは低いままであるとしているが、特にげっ歯類が多く生息する地域では注意が必要だと指摘する。

ニューヨーク州ストーニブルック・メディシンの感染症専門医、ルイス・マルコスは、「最初の死亡例が報告されてから数週間が経過しているにもかかわらず、確認された症例はわずかだ。このことは、このウイルスの感染力が比較的低く、感染には密接かつ長時間の接触が必要であることを示唆している」と述べる。「現在得られている情報に基づけば、広範囲に及ぶパンデミックのリスクは極めて低いと考えられる」

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