<ワインは一時期「健康の妙薬」と持ち上げられていたが>
[ロンドン発]フランスの若者世代がワインより安価で気軽に楽しめるビールを飲むようになり、仏文化の象徴的な一角が揺らいでいると英紙タイムズ(5月17日付)が報じている。国際ブドウ・ワイン機構と仏醸造業者連盟によると、昨年ビールの消費量がワインを上回った。
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過去30年間でフランス本土の人口は約15%増加したのに、ワインの消費量は37%も減少。昨年ビールが22億1000万リットル、ワインが22億リットル消費された。1960年代には1人当たり127リットルだった年間ワイン消費量は現在わずか40リットル。
フランス人の9割以上は今でもワインは仏文化やアイデンティティーの中核であり、海外でフランスのイメージを高めるブランドの一つとみなしている。Z世代(おおむね10代後半~20代)は上の世代よりも飲酒量が少なく、飲むとしてもワインよりビールを飲む傾向がある。
「フレンチパラドックス」説による空前の赤ワインブーム
これも時代の変化なのか。フランス人がバターやチーズ、肉たっぷりの食事を摂っているのに、英国や米国に比べて心臓病による死亡率が低い現象を「フレンチパラドックス」と呼ぶ。1990年代にこの説が提唱されるや否や米国を中心に空前の赤ワインブームが起きた。
ブドウの皮に豊富に含まれるポリフェノールが心臓病の原因とされる血液中の悪玉コレステロールの酸化をブロック、アルコールとポリフェノールが善玉コレステロールを増やして、血管を拡げ、血栓も生じにくくするとして、赤ワインは「健康の妙薬」と持ち上げられた。
しかし世界保健機関(WHO)は「健康に安全なアルコール摂取量は存在しない」「『保護効果』を語ること自体がアルコール害の全体像を見えなくする」と「赤ワインさえ飲めば心臓病を防げる」という俗説を退けている。フレンチパラドックスはもはや科学的に支持されていない。