W杯はスーパースプレッダーイベントになり得るのか

ハンタウイルスのパンデミックは、発生してからまだ日が浅い。新型コロナウイルスのパンデミックで世界が目にしたように状況は急速に変わり得る。

しかし現時点では、当局者や専門家は、一般市民へ感染が拡大するリスクは低いと強調している。その理由の1つに、ハンタウイルスの広がり方が新型コロナウイルスと異なることにある。

チャップマン大学の教授で全米感染症財団会長でもあるジェフリー・ゴード医師は本誌に対し、アンデス・ハンタウイルスのヒトからヒトへの感染率はわずか2~5%程度であると語った。さらに、ヒトからヒトへの感染には「長時間にわたる密接な接触」が必要であり、だからこそクルーズ船がその感染拡大を助長したのだと付け加えた。

「W杯会場は疫学的に異なる」とゴードは述べた。「もっとも、医療面での備えは重要だ。CDCと地域の保健当局は、検査と接触者追跡の能力を知っておくべきだ」

W杯のような大規模イベントでは、特にスタジアム、交通拠点、ファンが集まるイベントにおいて、人々が長時間近接することは本質的に避けられない。W杯の試合を開催するアメリカの主要スタジアムは、6万~8万人超の観客を収容できる。ファンは試合前後に客席、コンコース、公共交通機関で肩を寄せ合うことになる。

ゴードは、「密接で長時間にわたる接触」の定義は必ずしも明確ではないと述べた。感染は接触の種類に左右されるからだ。

「食事や寝具を共有する同居家族は、たとえ近くにいる時間が同程度であっても、隣のスタジアム席にいる人々とは大きく異なる」

また、W杯の場合、スタジアムに屋根がなく、外気に開かれている点である。ラビノウィッツは本誌に対し、屋外では、クルーズ船のような屋内空間よりリスクが低いだろうと語った。

ただし、クルーズ船の事例の検証も進めるべきだともしている。

「現時点で渡航制限やイベント中止が必要だとは見受けられない。しかし、このアンデスウイルス株の感染力をより正確に把握するため、クルーズ船に関連する感染例の集計を監視することは重要だ」

ヒトからヒトへの感染報告が増えていることが示されれば、状況は「再評価」される必要があると、ラビノウィッツは述べた。

リスクがあるのは試合会場だけではない
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