チェック項目のうち重要だったのは、「許容水準超過の確認」という軸である。外交官の公式発言、国家系メディアの外国向け発信、自国に有利なナラティブの設計などは、それ自体では非難できない通常の外交・国家PR活動である。
国家として非難可能なのは、CIB、票買い、隠蔽工作、事実無根の虚偽情報の意図的投入、制裁違反コンテンツの迂回配信など、限定された行為のみ。
この線引きを明示したことが、安直に「ロシアが!」、「中国が!」あるいは「また、プロパガンダ!」、「また偽情報!」といった話題が先行しがちな議論を見直すためのポイントになっている。
また、許容水準を超過していない場合は安全保障を目的としない外交などの組織が対応すべき案件ということになり、安全保障の議論からはずれる。
この判定構造を図にすると以下のようになる。この図解を拡張すれば、安全保障として対処すべきものと、外交の範囲で対処すべきものといった具合に対処方法も整理できるだろう。
指摘された行為がまず非難可能な性質のものか、その上で根拠が伴っているか——この2段階の篩を通った活動だけが、初めて安全保障での認知戦の議論で使えるレポートとなる。この判定を通らなかった場合、そのレポートが扱っているテーマは外交やPRで論じるべきものなのだ。
