イスラエルと米ユダヤ人社会との複雑な距離感

ドナルド・トランプ大統領は、ゴラン高原へのイスラエルの主権認定、エルサレムの首都認定、さらにエルサレムへの米大使館移転と、次々とイスラエル寄りの政策を進めた。20年の大統領選挙に向け、有権者の4分の1を占めるとされる福音派の支持を取り付けようという狙いだった。これに呼応するように、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も福音派との関係強化に努めた。

一方、右傾化するイスラエルとアメリカのユダヤ人社会との距離感は以前よりも複雑になっている。米メディアによると、24年の大統領選挙でユダヤ系有権者のうち79%は、民主党のカマラ・ハリスに投票したとされている。

ユダヤ系アメリカ人は、国内では人種的マイノリティーで、「リベラル民主主義」の信奉者だとされる。このため、権威主義的なトランプ大統領を支持しない傾向にあるのだ。

右傾化するイスラエルについても内心は複雑だ。今年4月のピュー・リサーチセンターの調査では、ユダヤ系アメリカ人のうちイスラエルを好意的に見ている人の割合は64%で、白人福音派プロテスタントの65%とほぼ同じだ。ユダヤ系にもかかわらず、4割弱がイスラエルを好意的には見ていないということになる。

イスラエルの宗教極右とイスラエルを強く支持するキリスト教福音派は、宗教的な終着点──ユダヤ人がメシアの到来を待望する一方、福音派の一部がキリストによる救済や再臨を重視する──が必ずしも一致しているわけではない。

両者の接近は、神学的・構造的な緊張を内包しているともいえる。

【動画】イラン戦争で宗教を利用するネタニヤフ
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