だが現政権からのメッセージはこうだ。ルールは恣意的に適用する、規制当局は鎖につないでおく、だから今は政府の機密を利用して、好きなように予測してくれ!

どうしてアメリカはこんな国になってしまったのか。少し視野を広げて考えてみると、行き当たるのはまたしても彼の名だ。少女人身売買の罪で起訴され2019年に獄中で死亡した富豪ジェフリー・エプスタイン。死亡の経緯にまつわる謎はさておき、注目すべきは「エプスタイン文書」だ。議会の要請を受け、司法省が公開した膨大な資料だ。

エプスタイン文書から見えてくるのは、必ずしもインサイダー取引のような疑惑ではない。しかしどちらの根底にも、権力者の抱きがちなゆがんだ信念がある。自分には法律や道徳も経済のルールも適用されない、自分は何をやっても許されるという信念だ。

そう信ずればこそ、トランプは昨年1月にこの国の権力の頂点に返り咲いた──そう言えなくもない。

アメリカでは、エプスタイン文書絡みで起訴された有名人はいない。ただし名前はたくさん出てきた。現職大統領に加え、元財務長官のラリー・サマーズ、元大統領のビル・クリントン、かつてトランプの盟友だったスティーブ・バノン、JPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモン、等々。

しかしエプスタイン絡みで、イギリスではアンドルー元王子が2月19日に公務上の不正行為の疑いで逮捕された(その後に保釈されたが、今も捜査は続いている)。労働党出身のピーター・マンデルソン前駐米大使も逮捕された。ノルウェーでもトルビョルン・ヤーグラン元首相が訴追されている。

イギリスの場合、こうした事件は公職における不正行為という昔ながらのコモンロー(一般法)で起訴に持ち込まれる。イギリスにあってアメリカにないのは、法の裁きに懸ける検察の意欲だ。

エプスタイン文書にトランプが出てくることはアンタッチャブル
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