しかし、適切なドナーが見つかったからといって、タンさんの苦難が終わったわけではなかった。移植の準備が整う前に、彼は心臓の冠動脈4カ所のバイパス手術を受け、長い回復期間を耐え抜かなければならなかったのだ。イルグさんは、この「贈り物」を渡せる日が来るまで、辛抱強く待ち続けた。

タンさんは、3人の子どもの母であるイルグさんが自分のために自らの人生を削るような選択をしてくれたことに対し、申し訳なさとありがたさが入り混じった「複雑な心境」だったと明かす。それでも、「自分の前に彼女が現れてくれたことを、本当に幸運に感じた」という。

「臓器移植を待っている人にとって、これは夢が叶ったようなものだ」とタンさんは語った。「今でもまだ信じられない気持ちだ」

全米腎臓財団によると、生体腎ドナーの大半は、術後も充実した生活を送ることができる。数週間後には仕事に復帰し、運動も再開でき、長期的な問題が生じる可能性は極めて低い。

また、現在主流となっている手術は体に負担の少ない低侵襲なもので、ほとんどのドナーは術後4〜6週間で完全に回復するという。
 

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