こうした開示対応を支える市場も急拡大している。かつて企業の連結決算を可能にしたのがERPと呼ばれる一元管理システムだったように、サステナビリティ情報の収集・管理・報告を一元化するクラウドサービスが次々と登場している。子会社やサプライヤーからCO2排出量や人権対応のデータが自動収集され、SSBJ基準や欧州の開示基準に合わせたレポート生成を容易にする。
市場調査会社、富士キメラ総研によると、こうしたESG関連のITソリューション市場は2030年度には約8500億円と、22年度の3倍以上への拡大が予測されている。
企業の境界線を再定義する
真夏に続く猛暑、線状降水帯による豪雨、相次ぐ水害──。異常気象はもはや誰もが肌で感じている現実だ。水口はこの状況をシステムの連鎖的崩壊として捉える。
「水循環や生態系といったエコロジカルシステムと、経済や社会のシステムが、どちらも悪化し、崩壊しつつある。どこかで食い止めなければならない」
SSBJ基準は、まさに「食い止める」ための仕組みだ。企業がサステナビリティに体系的に取り組み、その情報を判断材料に投資が行われる。その循環は、システム崩壊に歯止めをかける力になり得る。
一方、松原は企業という存在の境界線が再定義されると読み解く。従業員の家族、海外取引先の労働環境、原材料を調達する森林、そして廃棄された製品の行方にまで「わが社」の輪郭は広がっている。
それはさながら「わたし」の境界線が、名前という記号や衣服という人工物、さらには腸内フローラという体内の生態系にまで広がってきたように。もう財務諸表の中には収まり切らない。