Takahiko Wada
[東京 25日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は25日、ここ数年、企業の賃金・価格設定行動は「大きく変化している」と評価し、賃金上昇を伴う形での2%の物価安定目標の実現が「着実に近づいている」と述べた。賃金の上昇継続とコスト上昇分の販売価格への転嫁の広がりに自信を示し、長らく続いてきた賃金も物価もほとんど変化しない「ゼロノルム」の世界に戻る可能性は「大きく低下している」と語った。
植田総裁は経団連の審議員会で講演した。
日銀は18、19日の金融政策決定会合で0.75%への利上げを決定したばかり。植田総裁は講演で、春季労使交渉(春闘)に向けた労使の対応方針や、日銀の本支店を通じたヒアリング情報等を踏まえると「来年は、今年に続きしっかりとした賃上げが実施される可能性が高く、企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低い」と指摘。来年以降も、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高いと述べた。
その上で、引き続き利上げを行う方針を改めて示した。現在の実質金利は「きわめて低い水準にある」とし、展望リポートで示した中心的な見通しが実現していくとすれば、「経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と説明した。
植田総裁は「コストプッシュ要因などによる一時的な上昇ではなく、人々が先行き緩やかな物価上昇が続くことを前提に経済活動を行い、結果的に2%目標が持続的・安定的に実現する姿を展望している」と述べた。賃金については、生産年齢人口の減少など労働市場の構造変化は「不可逆的」であり、「経済に大きな負のショックが生じない限り、労働需給は引き締まった状況が続き、賃金には上昇圧力が掛かり続ける」と語った。基調的な物価上昇率は全体として緩やかな上昇傾向にあり、「2%に着実に近づいてきている」とした。
<賃金の判断プロセスの変化に期待>
植田総裁は、息の長い経済成長を実現するために、将来を見据えた人への投資や設備投資が「これまで以上に強く求められる局面を迎えている」と指摘。人への投資の観点から、賃金の「期待形成メカニズム」が変化していくことに期待感を示した。
これまでは過年度の物価上昇率が労働組合側のベースアップ要求の土台になってきたが、経営者が賃上げを判断する際に2%の物価上昇が続くことを検討の前提に加えるようになっていけば、「わが国全体として、賃金と物価がともに緩やかに上昇するメカニズムはより強固かつ持続的なものになっていく」と語った。