<転売は商売の根幹なのに、チケットの転売だけがなぜか「ダフ屋行為」として禁止されている。禁止しているのは、法律ではなく、都道府県の迷惑防止条例。ダフ屋行為の何が、どんな理由で規制されているのだろうか>

 先日、友人の誘いで、某ロックミュージシャンの引退ライブを満喫してきた。素晴らしい熱唱と、盛り上がる観衆の雰囲気を堪能したわけだが、それとは別に、初めて体験する出来事もあった。

 ライブの入場チケットが電子化されていたことだ。

 一般的な「紙」の入場チケットだと、転売されてしまうおそれがある。いわゆる「ダフ屋」が、チケットの価格を不当に吊り上げてしまう。

 その弊害を避けるためなのか、そのライブのチケットは、デジタル的なデータとして観覧希望者の携帯電話やスマートフォンに組み込まれることが義務づけられ、入場のとき、画面に特定の「QRコード」を表示させたり、「おサイフケータイ」のようにかざしたりして、その人に入場資格があるかどうかを機械で読み取らせ、識別する仕組みになっていた。

【参考記事】ライブ会場が不足する「2016年問題」が、いよいよ表面化している

 ただ、ライブ当日、最寄り駅から会場へ向かって歩いて行くと、途中で何人もの男たちから、目線を合わせないまま連続的に声をかけられるのである。

 

 「あるよあるよ、チケットあるよ」

 「チケットない人、あるよ~。余ってたら買うよ~」

 結局、いるじゃん、ダフ屋。......ということは、紙のチケットもあったのか。

 そもそも、ダフ屋はなぜ違法とされているのだろうか。よく考えてみると、なかなか奇妙だ。安く買って、高く売るのは、商売の根幹である。近ごろ副業として人気の「せどり」から、金券ショップ、リサイクルショップ、株取引に不動産取引まで、この世は"転売"であふれている。なのに、チケットの転売だけが「ダフ屋行為」と名指しされ、禁止されている。

 ダフ屋行為を禁止しているのは、法律ではなく、それぞれの地元の都道府県が規定する迷惑防止条例である。ただ、ほとんどの迷惑防止条例が「ダフ屋禁止」を盛り込んでいるので、実質的には法律と同等の全国的な規制だといえよう。

 たとえば、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、このようにダフ屋行為を規制している。


第2条(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)

 1 何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。
 2 何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。

ダフ屋行為の何が規制対象かを整理すると......

何を売り買いすることが規制対象か?

 電車などの運送機関の「切符」や、娯楽施設の「チケット」などが対象である。つまり、それ以外の物品は、規制から外れている。

原型は敗戦直後の「物価統制令」