◎最善に近い合意内容、日本の景気後退は回避

<明治安田総合研究所 フェロー チーフエコノミスト 小玉祐一氏>

朝方に一報を聞いた時は参院選直後の合意ということもあり厳しい内容を想定したが、ふたを開けてみれば、最善に近い結果だったのではないか。8月1日から25%の相互関税がかかった場合、日本経済は深刻な景気後退に陥る恐れがあった。今回の合意内容であれば、経済の回復基調はぎりぎりで維持できるほか、食品価格の落ち着きなども背景に、実質賃金は一段と改善するだろう。日銀は年内の利上げを検討できる状況になると考えられる。

自動車メーカーをはじめ輸出企業は、引き続き関税コストの一部を負担することになるだろうが、為替市場でも10%程度の変動はよくあることだ。大手企業が経営危機に陥ったり、中小の下請け企業を中心に「関税倒産」が増加するような事態にはならないとみている。

日米交渉が進展した背景として、米国内の世論において、各国との交渉の遅れに対し厳しい見方が広がり始めたことから、トランプ政権が早めの成果を欲した可能性がある。また、足元で米国の物価の伸びがやや加速していることも影響したかもしれない。

日本の自動車メーカーが一律10%の値上げを実施しただけでも、米国の総合消費者物価指数(CPI)は単純計算で0.25%上昇する。多くの国や企業が同様の施策を取れば、無視できない上昇幅となる可能性もあった。

今回の関税合意を節目として、石破茂首相が退陣する展開もあり得るだろうが、すでにマーケットはある程度織り込んでいるので大きな影響はないだろう。例えば、次期首相として高市早苗前経済安全保障担当相を有力視する声が高まれば、自民党の政策が消費減税に傾くシナリオが意識され、長期金利が上昇し、円が売られる局面も出てくるかもしれない。

不確実性解消、今後は政治・格付け巡るリスクに注目