<木村拓哉の次女Kōki,が主演の新作映画は、西部劇の趣を感じさせる物語であり、若い女剣士の成長を描いた青春ドラマ>

映画『トルネード』(日本公開は未定)はいくつもの顔を持った作品だ。イギリスの歴史ドラマでもあり、西部劇でもあり、サムライ映画でもある。そして、若者の成長やルーツをめぐる物語という性格もある。舞台は1790年代の英スコットランドの荒野。西部劇に打ってつけの無法地帯と言っていいだろう。

【動画】主人公の「女性サムライ」をKōki,が熱演!映画『トルネード』予告編

この映画は復讐の物語でもある。主人公である16歳の日本人女性トルネード(Kōki,)が日本刀を携えて父親の仇(かたき)を取ろうとする。

映画は、トルネードがシュガーマン(ティム・ロス)率いる血も涙もない盗賊団に追われている場面で始まる。シュガーマンは、自分たちが強奪した金塊をトルネードに盗まれたと思っているのだ。

トルネードの父親であるフージン(平岳大)は、シュガーマンに殺された。元サムライのフージンはスコットランドで家族と共に人形劇の巡業をして生活しており、トルネードに人形劇のほか、日本刀での戦いの方法も教えていた。

移民の父と娘のすれ違い

金塊と復讐という西部劇で定番のテーマがサムライ映画と混ざり合った形だ。西部劇とサムライ映画の異種交配には長い歴史がある。

ジョン・フォード監督の西部劇が黒澤明監督のサムライ映画に影響を与えたのは有名な話だ。一方、黒澤の『七人の侍』(1954年)は、ハリウッド映画の『荒野の七人』(60年)に影響を与えた。

『トルネード』は、家族の世代間ギャップを描く典型的な移民一家の物語でもある。父親は自分たちの文化(サムライとしての戦いの技法)を娘に学ばせようと腐心するが、娘は家業(人形劇)に渋々携わりながらも、都会に出ていきたがっている。父親がなまりの強い英語を話すのに対し、娘が完璧な英語を使いこなす点も印象的だ。

もちろん、18世紀末のスコットランドで日本人の一家が人形劇団として各地を回っていたというストーリーは現実離れしている。それでも、監督のジョン・マクリーンが社会のアウトサイダー的な存在に強い関心を寄せていることは見落としようがない。

物語が進むうちに、トルネードは父親の教えを受け入れて大人になっていく。やがて戦いの場面で「私はトルネード。この名をよく覚えておけ」と言う。わざとらしいセリフと言えなくもないが、自信に満ちたサムライの原点を描く物語にふさわしい一幕だ。

『ラスト・サムライ』(2003年)や『SHOGUN 将軍』(24年)など、西洋人が日本でサムライになるストーリーを美化して描いた作品は少なくない。その点、若い女性のサムライが荒涼とした原野で大人になっていく『トルネード』は、この種の作品に対する解毒剤とも言える。

しかし、『トルネード』は多くの要素を盛り込みすぎていて、サムライ映画として満足のいく作品には仕上がっていない。『たそがれ清兵衛』(02年)のような内省的な要素はなく、『座頭市』(03年)や『十三人の刺客』(10年)のような痛快感もない。

ひとことで言えば、この映画は型破りな作品ではあるが、定番のジャンル融合型作品としては物足りない。

The Conversation

Chi-Yun Shin, Senior Lecturer, Film Studies, Sheffield Hallam University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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