年間3000万人近い観光客が世界中から押し寄せる東南アジアの楽園タイ。

 微笑みの国として知られる仏教国タイには、あまり知られていない別の顔がある。マレーシアとの国境に近いディープサウス(深南部)と呼ばれる地域で続く激しい紛争だ。今も爆弾テロ事件などが毎月のように発生している。

 タイ政府は深南部で、住民の多数派を占めるマレー系イスラム教徒を長く迫害してきた。そうした背景から、60年代に入るとタイからの分離独立を目指すイスラム系組織が生まれた。そして麻薬取引などを資金源とする武装勢力が、仏教徒を狙った攻撃を始めるようになる。近年では国軍や地元警察、さらに自警団までが紛争に加わり、2004年の紛争激化からこれまでに6500人以上が命を落としている。

 2013年2月、タイ政府はついに重い腰を上げ、武装勢力との停戦交渉を開始するが、国内情勢の悪化で交渉は停止。2014年12月になってようやく、タイ政府とこの地域に強い影響力があるマレーシア政府が交渉再開に合意するに至った。

 その甲斐あって、2014年の紛争の死者数は246人と、2004年以降最も死傷者が少ない年となった。

 戦闘が下火になっている現在、街では緊張感が緩和され、住民は落ち着きを見せている。ただ散発的なテロ事件は相変わらず発生している。戦闘やテロが、いつ再び激化してもおかしくない不安定な状況は変わらない。

 束の間の落ち着きは、嵐の前の静けさか、それともこのまま紛争は終息へと向かうのか――。今年のタイ深南部の情勢が注目される。

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深南部では週末に鳥の鳴き声を競う競技会が各地で開催される(ヤラー)
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主要道路にはいくつものチェックポイントが設置されている(クロンピナン)