トランプには筋肉あれど頭脳なし

そして、最終的な目的は何なのか? 新たな通商協定か、関税導入前の正常な状態への回帰か、それとも、勝利を宣言して別の気晴らしに移るための見せかけのパフォーマンスに過ぎないのか。

それは誰にも分からない。なぜなら、そこに一貫した方針など存在しないからだ。

トランプには筋肉はあるが頭脳がない。関税が引き上げられたのはトランプが「勝利したい」と望んだからであり、いま関税が引き下げられるのは、トランプの目にも関税政策による損害が見えてきたからに他ならない。この一件から我々が得たのは、「超大国はこうなってはならない」という痛烈な教訓だ。

トランプ関税と対比されるべきは、本来の通商政策のあり方だ。熟慮された、予測可能な通商政策であり、経済学者や外交官、通商法の専門家、業界関係者らの意見を取り入れた通商政策である。

目指すべきは、短期的な見栄ではなく長期的な競争力の強化であり、市場をぐらつかせる突発的な発表ではなく、安定した政策運営だ。これこそが真に政府らしい通商政策であり、経済を支える投資を行っている企業から信頼を勝ち取る道なのだ。

我々が巻き込まれているのはトランプの「素人芝居」だ。思いつきで行われる政策決定の中、関税は乱暴に振るわれ、通商交渉はリアリティ番組のクライマックスさながらのものとなっている。

我々が受けているのは、経済的な苦痛であり、意味のない犠牲だ。我々が選んだ大統領は、戦略ではなく衝動によってアメリカを統治している。

[筆者]

アロン・ソロモン(Aron Solomon)

英紙『インディペンデント』に掲載した米アメリカンフットボールリーグ(NFL)の「人種規範化」政策を暴いた画期的な論説で、ピュリツァー賞にノミネートされたジャーナリスト。法務博士(JD)でもあり、法律、メディア、戦略の分野における世界的なオピニオンリーダー。

法律事務所向けのデジタルマーケティングに特化したアメリカ企業、AMPLIFYの最高戦略責任者として、その深い専門知識を活かし、リーガル・マーケティングの未来を築いている。

マクギル大学およびペンシルベニア大学で起業家精神を教えた経験もあり、「世界で最も革新的な法律家50人」に贈られるFastcase 50にも選出された。

(本稿で示された見解は筆者個人によるものです)

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